捧げ物

□あなたに巡り合えた事が私の幸せ
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ハートランドシティが炎に包まれて壊れていく。通常、モンスターがARビジョンによって立体的に見えることはあっても、実体化するのはありえないことだった。





しかし、おぞましい姿をしたモンスター――三邪神が街を破壊していることは変わりようのない事実だった。
















街の人々が散り散りに逃げ去っていく。その中で、フードを深く被った少女が混乱状態に陥った街の人々に声をかけ、導いていた。



「あ…っ」


「ハルト!」



人混みの中、ハルトと呼ばれた少年が足を掬われ、転んでしまう。少女はそちらを振り向き、ハルトとその兄らしき人物の元へと急いだ。



「大丈夫ですか!?」


「ああ。大丈夫か?ハルト」


「うん、大丈夫…」



ハルトの傍に跪き、身体を支えてやると少女は兄の方を向いて口を開く。



「早く逃げてください」


「しかし、お前は…」


「私なら大丈夫、……!?」



言い終わる前に、視界の端に触手らしきものが映りこんだ。目に狂いがなければ、間違いなくこちらに向かってきている。被害が出る前に対処しないと。
少女は触手に向かって飛び上がり、回し蹴りをかます。すると触手は派手な音を立てて跡形もなく消え去ったのだ。



「…身の程を知りなさい」



少女は低い声でそう言い放つと次から次へと建物を足場にして触手を破壊していく。街の人々は逃げることを忘れ、その光景に目を奪われていた。少女が助けた兄弟も、また然り。
少女が最後の一体になった邪神の上空に舞い上がれば、フードが脱げ、隠していた金色の髪と燃えるような赤色の瞳が露わになった。



「消えろ…!」



一回転したかと思えば、少女は落下した勢いで踵落としを食らわせる。そして次の瞬間には邪神は塵芥に帰(き)していった。しかし、少女はそのまま着地する体勢を見せず、重量に逆らわずに落ちていく。



「…やばい、身体が…っ」



二体目の邪神を相手にしていた時に食らったダメージが今頃になって返ってきたようだ。
身体が全く言うことを聞かない。このままだと地面に叩きつけられてしまうだろう。
少女は覚悟したように固く瞼を閉じた。








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