夏戦

□06
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アイスを片付けて、お風呂場でズボンを捲って待ってる佳主馬の元に急いだ。

シャワーで汚れを流すと、いたいと言って小さな体をぷるぷる震わせた。
ちょっとだけプリンみたいだとか思ってしまったわたしを許して、ごめんね佳主馬。
タオルで水を拭いて、リビングまで手を引いて歩いた。



「ひどくなくてよかったよ」

「うん」

「バンドエイド貼っとこうか」

「うん」

「………おなかすいたね」

「うん」

「…………。」



見るからに元気が無い。
極力優しく貼って、すぐ治るよ、と手を当てた。

佳主馬にジュースを渡して、お昼の準備をする。
へこんでいる佳主馬のために何かおもしろいアニメでもつけるべきだろうか。

佳主馬は膝のバンドエイドを突っついて、ふはぁ、と変なため息を吐く。
それをみて、一緒に付いていたのにケガをさせてしまった、とわたしもため息を吐いた。

コップを置いて佳主馬がこっちに来る。
なんだろう。



「おねぇちゃん」

「ん?」

「てつだう」

「え、足は大丈夫?」

「うん。」

「そっか、じゃあ手伝ってもらおうかな。」



手が届かないから踏み台を用意して、レタスを何枚か剥がしてちぎってもらうことにした。

黙々とレタスをちぎり佳主馬ができた、とレタスを置いて手を洗った。



「………できた。」

「(できちゃった。)あ、ありがとう。」



サンドイッチに挟むために切ったり混ぜたりしたものをトレイに乗せてテーブルに運んだ。



「……よし、すきなものを挟んでください。」

「ぼくの?」

「うん。」

「おねぇちゃんは?」

「わたしもするよ」



適当にツナマヨとレタスを挟む、皿に置く。
それを見て佳主馬が同じように作り出した。
小さな手で器用だよなぁ。



「あ、ジャムのも作る?」

「うん」

「取ってくるね」



いちごとブルーベリーのジャムを冷蔵庫から出した。
振り向くと佳主馬が手を止めてこちらを見ている。
なんだろう、と思いながらフォークも2本持って、どうしたのって聞いても、なんにもないって、作業を再開する。

だらだらしゃべりながら進めて、全部のパンに挟み終わった、時間が掛かったから、達成感でいっぱい。
佳主馬の方が作業が早かったから、佳主馬の方が働いたんだけど。

これだけあればおにぎりは別にいいか、サンドイッチも余るくらいだし。
佳主馬のコップにジュースを追加して、わたしはお茶をいれた。

コップを両手で抱える佳主馬にお疲れと言ったら、別に疲れてないよ、と不思議そうな顔をされた。
なんだかわたしは佳主馬に苦労掛けさせてばかりで申し訳ない。

カチリと合わせて乾杯して、いただきますをしたら、なにに乾杯なのかと言われてしまった。
いや、何にって。



「……おばあちゃん家に行くと乾杯ってするでしょ」

「あれは、おめでたいから」

「これもね、おめでたいんだよ」

「?」

「ほら、きょうは、はじめて記念日だから。」

「きねん?」

「そう、記念。」



納得したように、コップを掲げた。
もう一回するのか。

掲げたまま、佳主馬は少し悩んでから、はっきり言った。



「ふたりのであいに、かんぱい」

「………か、乾杯。」



一体どこで覚えたのだろう、そんなセリフ。

昼も過ぎた自宅、ジュースとお茶で、弟との出会いに乾杯か。

確かにこれはおめでたいね、笑いをこらえていると、笑ったらだめだとお叱りを受けた。
まだ笑ってないよ。



「佳主馬に出会えてうれしい」



にやにやしながらだけど、思った通りに伝えたら、佳主馬がじゃあ僕たち一緒だねとにやにや照れたように笑った。








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