あひる

□方向感覚
1ページ/1ページ











「あ、粉が無い。テープも絆創膏も無い………買い出し行かないとだ……」



マネージャーの一言で部員はざわつきはじめた。

マネージャーの名前先輩は重度の方向感覚のおかしな人だった。



ドリンクの粉末が無くなり、テーピングのテープが無くなり、絆創膏、湿布、冷却スプレー…

いろんな物が底を尽きようとしていた。



何故無くなりそうになるまで放っておいたのか、名前先輩の方向音痴が原因だった。(超がつくほどの)

しばらく前に「買い出し行ってきます!!」と元気に出ていった名前先輩は一時間経っても二時間経っても戻って来なくて、二時間と少したった頃、「もしもし横山くん??名前だけど。迷子になっちゃったー。てへ」と(優しい)横山先輩に電話が掛かってきた。


事情を聞いたところ
近くのドラッグストアで必要な物すべてを揃えることができず仕方なく、少し(少し)遠出したところ帰り道が分からなくなってしまったらしい。
てへ。じゃないまったく

おかげさまで名前先輩に買い出しを頼めない。

そして箱の中はほぼ空っぽだ。

そしてきょう。

買い出しに行かなきゃならないようだ。



「あー…誰か、1年、一緒に付いて行った方がいいんじゃねぇの」

「え〜1人で行けるもん!!」

「そんな話し方してもかわいくないぞ。」

「ちぇっ」



………じゃあ誰が行く??

正直なところみんな名前先輩と買い出しに行きたいのだ。
まぁ、僕はそんなことないけど


部活はキツイし先輩は怖い。
まあ、僕はそんなことないけど

そんなことないけど。

ざわざわと名前先輩に
俺と行きませんか。とアピールをしている。

なんだかめんどくさいし、おもしろくない。



「名前先輩、ドリンク、貰えますか」

「あ、うん。あるよー」



どうぞって渡されて
ありがとうございますって応えながら、やっぱりこの人かわいいな。とかのんびり考えてた。

みんながさわいでる間は休憩だし。
僕には関係のないことだし。

って考えてたんだけど。



「みんな失礼だよねー」

「へ」

「たった1回、まいごになっただけなのにさー」

「…は、はぁ」



まだみんなはさわいでる。

俺が行く。
俺が行く。
俺が行く。



「………名前先輩。」

「うん??」

「僕と一緒に行きませんか」

「へ」

「いやなら別にいいですけど」

「いやいやいやいやいや」

「そうですか」

「あ、いや、そっちじゃなくて…えっと………」

「………………」

「………えっと…じゃあ、行きましょうか…??」










ちょっとそこまで







end








[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ