あひる
□みかん
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学校の自動販売機の前でヒョウは悩んでいた。
僕はとっくにジュースを買っていたのだが何故かヒョウが買うまで律儀に飲むのを待っていた。
もとはと言えばそれが間違いだったのかもしれない。
さっさと飲み終えてしまえばこんなことにならなかっただろう。
「ヒョウ遅いよ。悩みすぎ」
「りんごかぶどう、これは悩むべや…」
「僕、先行くよ」
「ちょま、…よし、じゃりんご、りんごにする」
「うぁーぶどうにするべきだっただろうか…」
「また買ったらいいだろ」
ヒョウがパックのりんごジュースをずるずると飲んでいて、僕はそれのオレンジを飲んでいた。
特に注意散漫ということも無かったが、注意こそしていなかった。
そのせいで曲がり角で女の子にぶつかり、オレンジジュースをかぶらせてしまうのはこのあとすぐのこと。
「鷹山には味の違いが分からんのかっ!!」
「そうは言ってないでしょ。ただ…」
どんっ
「えっ」
「え」
「うわっ」
ぶしゃっ
「ギャーッりんごジュースがっ!!」
「………」
「………」
……被害報告。
僕が女の子にぶつかってその反動でヒョウが僕にぶつかった。
被害としては僕の持っていたジュースが女の子にかかり(主に頭部)、ヒョウの持っていたものはヒョウ自身(主に頭部)にかかった。
…そして僕は無傷だった。
ヒョウはぎゃあぎゃあ「りんごがりんごが!!」と騒いでいたが僕のせいで被害にあった女の子は無言で髪からオレンジジュースをぽたぽた垂らしながらとにかく驚いた顔をしていた。
パックは床に落ちて小さな水溜まりを作っている。
「…えっと、ごめんなさい、大丈夫ですか」
「……………あ、わ、大丈夫です…!!ジュースごめんなさい、弁償します!!」
「えっ!?いや、いいです。この流れだと僕がクリーニング代を出すのが自然………」
「は、え、いやいや…!!わたしが不注意だったんです!!ごめんなさいごめんなさい!!」
「あ、の、ジュースはもういいから、とりあえず着替えとか髪とか…」
「え、うわぁ!!びしょびしょだっ」
「おれを空気にするなぁぁぁ!!」
「ぎゃーっ!!」
「ヒョウ…」
「鷹山のせいでおれまでジュースかぶったー」
「ヒョウのはちょっと、なんとも言えないな…」
「なんで!?」
「ごっごめんなさい!!クリーニング代を…!!」
「いや、とりあえず着替えた方がいいでしょ。ヒョウも。」
髪べたべただなぁ…と女の子が言ったから本当にごめんねと謝ると「うぁぁそういう意味じゃないんですごめんなさい」とあわてて謝ってきた。
多分この人損してる。
「水道でいいや…」
と自動販売機のすぐそばにある水道の蛇口をひねった。
髪をゆすごうとしていると分かったから声をかけようとした。
「ぶぁっ冷たいっ」
一足遅かった。
「そりゃそうだよ……。部活のシャワー室があるから使いなよ」
「いや、大丈夫です…それよりお兄さんたち大丈夫ですか…」
お兄さんだって!!とヒョウが少しはしゃいでいるがこの人同い年だろう。
冷たい冷たいと言いながら髪を洗っていた彼女は水をとめて呟いた。
「…あ……」
タオル教室だ…
「……僕とってくるよ。名前と教室は」
「えぇぇ!?大丈夫です大丈夫です!!このまま行けます!!」
「いや、多分行けないよ」
「鷹山ーおれのもついでに持ってきておくれー」
ヒョウがそう言うから、ヒョウのと自分のを持ってくることにする。
「……君もちゃんと待っててね。」
「はい…」