魔法
□04
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買い物のあと組分けをするため、校長室に呼ばれた。
というか、買い物のあと校長室に戻ったというだけだけど。
座ってと指された椅子に座ると、布切れのようなものを頭に乗せられた。
一体何だ?と見上げるとうーんと唸り声が聞こえる。
どこから?
まさか、ここ?
「……しゃべった…!!」
「静かにしろ小娘っ」
「ひっ、すみません……」
「…………そうだなぁ、うーん……度胸はある、頭も悪くない…しかも意欲がある…………グリフィンドール!!」
「ぎゃっ」
こそこそしゃべったかと思ったらは、大きな声で突然さけんだ。
なんで帽子がしゃべるの…。
「大広間ではないからそんなに大きな声でなくとも大丈夫じゃ」
「む?」
「む、じゃなくての。」
「うむ。」
「……………」
まったく、とため息を吐きながら校長はわたしの頭から布を外した。
少し離れた棚に置く。
そのあと向き直ってにこり、と笑った。
「おめでとう、君はいまからグリフィンドール寮の3年生だ」
「は、え、…意味が……」
「分からないかい?大丈夫。共に食事をするメンバーと、寝泊まりする部屋が決まっただけのこと。」
「………………。」
「心配事は何もないさ」
校長は清々しい程の笑顔で軽く説明した。
グリフィンドールを含めて4つの寮に分かれていること。
消灯時間を過ぎたら寮から出てはいけないこと。
ルームメイトとは仲よくこと。
あと授業には遅刻しないように。
「よかったなぁ、君の寮にはリーマスもいるから。何か分からないことがあったら彼に聞くといい」
「…………」
「いいかの?」
「はい…」
そのあと、マクゴナガル先生というグリフィンドールの担任?の先生に挨拶をして、寮まで連れて行ってもらった。
扉の前で呪文のような合言葉、というか呪文を言った。
これを忘れると中に入れなくなるらしい。
勘弁してくれ。
「これは、ル、ル、ルームシェア??こんなの、初めて……」
「よろしくね、名前」
「あ、よ、よろしくエバンズさん……」
「リリーでいいわ」
「えっ、あ、じゃあ、…リリー……」
ホグワーツ入学にあたり、わたしは寮生活をすることになった。
これはルームシェアではない。
同室になった子のひとりのリリーさんは、まるで人形のようにかわいくて、それこそ、そう、まるで名前のまま。
百合のようにきれい。
優しく声なんてかけられると緊張してしまって、顔も見れないじゃないか。
「名前は、ずいぶん荷物が少ないのね。」
「え!?えっと…片付け、苦手だから少ない方が、楽かなって……。」
「そうなんだ」
「う、うん」
「あ、分からないことがあったら何でも言ってね。」
「ありがとう」
「談話室に行こ。みんなを紹介するから」
「……う、うん…。」
緊張するな…
人見知りでコミュニケーション能力に欠けるところがあるんだよ、わたし。
……自分で自覚してるんだよ、わたし。
英語はしゃべれてるみたいだし、あとはわたしの頑張り次第だよね。
リリーさんとも是非仲よくしたいぞ。
何か話題……とわたしが真剣に考えていると、メガネの男の子がずんずんと近寄って声を掛けてきた。
「君かっ!!」
「うわっ!?」
「転校生の分際でリリーのルームメイトになったって輩は……!!」
「え…(輩、って…わたしが何をしたと言うんだ……)」
「難癖つけるのやめてくれる?ポッター」
「ポッターさん………」
「気安く呼ぶなっ!僕だって、僕だって……リリーと同じ空間で寝たいのに〜!!」
「うわぁ…なんか……(きついな…)」
「気持ち悪いわよね、この人は放っときましょう。」
「あ、うん……」
発想がこわい眼鏡ボーイ…
ポッターさんとは仲よくなれないんだろうな、と確信に近いものを感じた。
わたしがリリーさんと同室である限りは仲よくなれないんだろう。多分。
「やぁ、名前」
「…………ど、どうも。」
声を掛けてきた人物に気付くと、ルーピンと友達なの?とリリーが聞くので、少し悩んだけど頷いた。
って、あれ、リリーさん、名字で呼んでないか?
わたしの表情を見てルーピンくんは爽やかな微笑みを向けて「僕は基本を教えただけだよ」と悪びれもなく言ってのけた。
思わずため息を吐いてルーピンくんに例の通り、カタイ笑顔を向けた。
「じゃあルーピンくんで問題無いかな。できたらわたしのことも名字で呼んで欲しいのだけど」
「え?どうして?」
「わたしは基本じゃなくていい。それに仲がいいと思われたら困るでしょ」
「ははっ、それくらいで思わないよ。基本なんだから」
「……………。」
「それにしても。君はスリザリンの素質があると思ってたんだけど……」
「………わたしそんな悪い人に見えてたの。」
「そういう意味じゃないよ」
「じゃあどういう意味。」
「なんとなくってだけだよ。同じ寮でうれしいな、これからもよろしく」
「(うれしいなんて思ってないくせに…)…よろしく」
「ちゃんと思ってるよ」
「心を読むな」
「心じゃなくて顔にでてる」
「(むかつく……)」
悔しくて顔を押さえて言い返せず黙った。
ルーピンくんは嬉しそうに笑った。
四つの寮に求められるものは校長から聞いているから分かるのだ。
ルーピンくんの方がよっぽどスリザリンに向いてる気がする。
わたしとルーピンくんの光景を見たリリーさんが天使のような笑顔で言ったのだ。
「ふたりは仲がいいのね。」
わたしもルーピンくんも苦笑いしかできなかった。
も、勘弁してくださいよぉ……。