めいん

□大事なモノ
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僕ちんの可愛い可愛い人形
やっと帰ってきてくれたね
ずっと待ってたよ

ガラス玉のような目で僕ちんを見つめてくる
その瞳には怒りや憎しみ悲しみ喜び、そんな感情なんて存在しないただ命令に従う忠実な人形さん


「ねぇティナ君は今何を考えているんだい?」

当たり前のごとく返事は返ってこない。真っ直ぐ先を見つめる瞳
ティナの歩みはだんだん遅くなり
弾むように歩くケフカと随分離れてしまった


「君は歩くの遅いねぇ。僕ちんに着いてこれないのかい!?」

少し口調を強くしてティナに訴える

『…………。』

分かってる 返事なんか返ってこない事なんか
ケフカは構わず歩みを進める
しかしティナはその場から一歩も動こうとしない


「どうしたんです!!なにか言いたいことでもあるんですか!?」


痺れを切らしたケフカは感情の無いティナに叫び思考を制御している魔法を少し緩めた

「ほら、言ってごらんなさい」

『…私…な…ぜこんなに…も汚れている……?』


途切れ途切れに話すティナ
感情など見えない瞳がケフカにはこの時だけとても悲しそうに見えていた。今すぐにでも泣きだしそうな弱々しい少女の姿がケフカには見えた。

そんなティナを見つめケフカは表情を緩めて微笑み彼女を抱き寄せて頭を撫でる。そしてこうつぶやく


「それはキミが壊したモノの数だよ。大丈夫ですよ。キミだけじゃないんだから。ワタシも一緒です。」


ケフカの胸で一点を見つめているティナの瞳に涙が一筋流れた


「おや、キミのような人形でも涙を流すんですね。大丈夫、大丈夫です。この汚れは大事なモノの数だけ付いているんです。大事なモノの感触なんです。
大事なモノはね、自分で壊した方がいいんです。たくさんあると持ってられませんしね。壊した感触が手に染み付いていればずっと一緒に居られるでしょ。」


狂気じみた言葉。 今のティナにはどう聞こえるのか、はたまた聞こえているのか、それさえも分からない。

思い出すらも忘れてしまって、自分の存在をも恐れる哀れな少女。
ケフカは抱き寄せた彼女は大事にしなければならない。 だから最期には、ワタシの手で壊して、 2人で全てに怯えて、全てを支配する力を共有しよう。そう思っている。


「さぁ…お人形さん、顔を上げてくれませんか??」


顔を上げたティナの顔には無感情無表情ながら涙の跡が残っていた


「ワタシはキミを独りにはしませんよ」




そう言ってティナの肩を抱き
目の前に広がる闇へと2人は
消えて行った。



大事なモノはすぐ近くにあるんです。 近すぎて見えないから見付けにくいんです。 見付けた時にどんな感情を抱くか、悲しみ、喜び、様々です。

でもそれも邪魔ではありませんか??

だから破壊してしまえば
とっても楽になれますよ


破壊とは喜びです
悲しみです
矛盾してるかもしれませんが
一度やってしまえば………





大事なモノやっと見つけた――



END
 

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