銀魂2

□新年、辰年。
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元旦。
坂本は立派な黒い紋付袴を身につけ、陸奥は深い青の振袖を着てそれに合うよう綺麗に髪を上げた姿で、江戸で一番でかい神社に来ていた。

「おぉ…やっぱり参拝客ば多いのう」

二人はザッと数百人は居るだろうずらり列んだ人の列を見て驚く。
坂本が地球に行きたがっていた理由は、商売繁盛を祈願しに初詣がしたいという理由だった。てっきりキャバクラかと思ったが、そういう理由ならば行っても良いだろうと陸奥の承諾を得て、現在に至る。

「アッハッハッ、こりゃあ1時間は列ぶかの〜。陸奥、お前堪えられるか?」

普段と違い、振袖では苦しいだろうと気を遣って言った事だが、あっさりと一言、「問題ない」と返されなんとなく落ち込む。
それから暫くは商談の話やらスケジュールやらの話をし、30分程経った頃。見覚えのある白いペンギンのような天人の姿を見付け、坂本は物凄い笑顔で叫んだ。

「エリザベス!ヅラ!!」
「ヅラじゃない、桂だ。…む、坂本か?」

桂は少し目を細め坂本と陸奥を見遣り、ハッキリ姿を確認すると近寄ってきた。前からやってきた所を見ると、参拝を終えた後のようだ。

「明けましておめでとうぜよ。昨年は世話んなったのうヅラ!」
「桂だ。明けましておめでとう。俺の方こそ、昨年は本当に世話になった」
「全くじゃ」

旧友同士の新年の挨拶にぼそりと口を挟んだ陸奥は、二人に振り向かれると同時に違う方向を向き、何もなかったかのような顔で襟巻きを弄っていた。
桂は何も言えずに苦笑いだけ浮かべ、坂本の方へ向き返る。

「ヅラ、お前この後は暇ながか?」

ゆっくりと進んでいく列に合わせて歩を進めつつ、桂の今日の予定を聞き出す。何も予定がないと返ってくると思っていたが、予想は外れ、桂は首を横に振った。

「残念だが、仲間達と集会があってな。この後すぐに向かわねばならない」

坂本は本当に残念だという顔で「そうか」と頷き、旧友に別れを告げた。
陸奥はその様子を見て何となく坂本のしたい事に気付き、本人に気づかれぬよう呆れた顔で、どうりでやたらキョロキョロしている訳だと笑う。
さらに列は大分進み、後少しだというところで坂本がいきなり「あっ」と漏らして列を抜け出した。

「おい!何処へ行く!」
「すぐ戻るぜよ!」

お前は列んでいてくれと列を指差し駆けて行く。また知り合いでも見付けたか、目が輝いていたな。陸奥は仕方ないから今日くらいは見逃してやろうなんて思って、坂本の行動を黙って見ている事にした。

列を離れた坂本は、神社の少し奥でやっている屋台をうろつく、背丈の低めな男の背中をポンと叩き、それに振り向いた男は驚いた表情を浮かべて坂本を見上げる。

「坂本!?」
「まっこと久しいの〜高杉!あけまして…」
「何でテメェこんな所に居やがる」

数年ぶりの再会だと言うのに、高杉は冷ややかな目で坂本を睨み手を払った。

「正月じゃき、初詣に来とっての!あけましておめ…」
「宇宙に帰れ」

最後まで言わせてくれないのはわざとなのだろうか。あけましておめでとうという言葉を言うのは諦め、話題を変える事にする。

「…お前も初詣かや?」
「俺が神頼みなんてするわけねェだろ…こっちに用があるだけだ」

馬鹿にした笑みで否定し、指差す先には屋台の列んだ祭の場。用があるというか、遊びに来ただけというか。どちらにせよ参拝に興味はないらしい。
桂と同じく高杉にもこの後の予定を聞こうとすると、すぐ後ろからガチャリと聞き慣れた音がした。

「…何者っスか。晋助様をナンパするとはいい度胸っス。」
「ナンパぁぁ?」

銃口を突き付けられているにも関わらず坂本は、高杉の部下また子の方にくるりと顔を向けた。
少しびっくりしたまた子はゆっくりと銃を下ろす。

「な…、…晋助様の知り合いっスか?」
「知らねェな。こんな毛玉に知り合いは居ねェ」
「ちょ、高杉、いくらなんでも言い過ぎちやー。わしだって傷つくぜよ?アッハッハッ」

わざとらしくハの字に曲げた眉がムカつく。高杉は坂本の前をするりと通り過ぎ、また子と共にスタスタ歩いていってしまった。


「あっ高杉!ちょお待ちっ、高杉ぃぃぃ!!」







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