銀魂3

□春男 ハルオトコ
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  ― 春男 ハルオトコ ―















寒い寒い。

外は雪が降ってやがる。
コタツから出たくねぇ。


そう駄々を捏ねたら

向こうからやってきた。



「じゃ、僕は姉上の所に神楽ちゃん迎えに行ってくるんで。ゆっくりしていってくださいね〜」

どてらを羽織り、だらだらとコタツに項垂れる銀時と
その向かいに手を振りながら佇む坂本に対して新八は頭を下げて万事屋を出て行った。


「アッハッハッ、ゆっくりじゃて!わしこれでも結構忙しい身やきの〜」

外出前に新八が出してくれた暖かいお茶を啜り、当たり前かのようにコタツに入ってくる坂本を、銀時はものすごく嫌そうな顔をして見つめる。

「じゃあ来んなよ」

その一言に尽きるだろう。
だいたい何処が忙しそうなのかが銀時には理解出来ない。
此処に来る前はいつものキャバクラに行っていたとも言うし、どうせまた船を抜け出して来ているだけだろう。

「つれん事言うのぉ。旧友ば会いに来よったら嬉しいもんじゃろが」

「お前とヅラと高杉以外だったら嬉しいね」

「アッハッハッハッ!!またまた〜そげん事言うて!本当は嬉しいくせに!ハッハッハッ!!」


「帰れ。今すぐ帰れ。」


会話は通じているんだけれども、返答がカンに障る。
くしゃくしゃ…というかモジャモジャの髪の毛を、さらにモジャモジャにするかのようにわしゃわしゃと掻きむしり馬鹿笑いする坂本に、近くにあったスプーンを投げ付けた。
さっきホットいちご牛乳を作った時にカップを掻き混ぜたスプーンだ。


「あだっ!何すんじゃあ〜!暴力反対ぜよ!!」

「うるせぇ帰れ。3秒以内にこの家から出ていけ」


「ちょちょちょ、待ち!今出てったら寒さで死ぬきに!」


言いながら返されたスプーンを再度投げ付ける。二度目に投げたスプーンは見事真ん中分けで見えている額にヒットし、見る見るうちに赤い痕を作った。
思いのほか痛かったのだろう、坂本は額を押えて畳の上を転げまわった。

「てかよ、寒さで死ぬっておかしくねぇ?忙しいハズの社長さん、船はどうした船は」

自業自得と割り切っている銀時は謝るという気は毛頭なく、痛みに悶える相手をコタツの中の足で軽く蹴り飛ばす。
質問に対してはぐらかすようにハハハと笑うのを見て、やはり勝手に抜け出してきただけかと確信した。
早い話が、ここ(万事屋)に逃げてきたわけだ。追っ手の部下から匿えという事だろう。
仕方ねえ、とでも言ってやりたいが、部下である陸奥のおっかなさは銀時も知るところである。このままでは巻き込まれ兼ねない。
いや、既に巻き込まれたも同然だ。

「お前な…」

「頼む金時!!今だけここに置いちょくれ!!」

「銀時だっつてんだろ馬鹿モジャ!!めんどくせーよ!さっさと帰れ!!」

「あ、そういやあ土産ば買ってきとったんじゃが…」

コタツから引きずり出して強制送還でもしてやろうかと思った時、坂本は後ろに置いてあった袋をガサゴソと漁り始めた。

「んなもんいらねーから早く出……!?」

物で釣られるもんかと気張った銀時の前に差し出された、江戸一番を誇る超有名甘味処の高級デザート。
一日数個限定というチョコレートパフェ(持ち帰り容器入り)と、ひとつ数千円とする特製プリン(新八調べ)





「…辰馬ァ、好きなだけ居ていいぜ」






釣られた。







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