小説

□暗い闇
1ページ/1ページ

「一緒には行けません。」
「千鶴、俺達と一緒に行こう。ほらっ。」
「……私は、二人とは一緒に行けません!!

私は、キッパリと薫の誘いを断る。

「千鶴…、お前は、
父親も、血を分けた兄妹も見捨てるんだ…?」

薫の表情が冷ややかになる。

「俺達よりも、
羅刹の沖田を取るんだ?」

一瞬だけ、薫の表情が変化したように思えたけど、
気のせいだろう。
見れば先刻と同じような
冷ややかな目で、私を見つめていた。

「千鶴…。私達と一緒に来ないか?
人間を滅ぼし、私達だけの王国を作ろう。」
「……嫌です!」

どうして?
どうしてそんなことを言うのっ!?
確かに、私も人間が憎くないかと問われれば、
一族が滅んだ、実の父や母が殺されたという真実を知った今では、
その人間を憎く思う。
…だけど、人間が全員憎いというわけではない。

新選組の人達は、
いつでも私を殺せると言っていた。
なのに、殺すどころか守ってくれた。

私は…、そんなみんなが大好きだった。

そして、今は……、
何よりも愛すべき人が、隣にいる……。


「千鶴…。」
「無駄だよ。
所詮、こいつらと俺達とじゃ、
目指してるものが違うんだ。」

そう言い放った薫が付け足すように、

「でも……、
沖田を殺せば……?」
「!!」

薫の言葉に、私は息をのんだ。

「そうか、千鶴……。
お前は、その男にたぶらかされているのだな?」「違うの!父様!!」

私の言葉は、もう父様の耳には届かない。

「……いい?」

沖田さんが、私に確かめる。
私は何も言わなかった。

何も言わなくても、
沖田さんなら、分かってくれるから……。

沖田さんは、私に向いて微笑むと、
刀を手に取った。

カキンッ

そして、
決して人が入ることなど出来ない戦いが始まった。
二人を相手にしているにもかかわらず、
沖田さんは、二人を押していた。
再び地を蹴り、父様と沖田さんが打ち合った。
それに薫が続こうとしたように思えた。

しかし、薫は私に向かって刀を振り上げて、

「俺が誰よりも憎んでいるのは、妹を奪った沖田じゃなくて…、

俺を裏切った、お前だよ……!!」

「退けよっ!!」

今までに聞いたことの
ないような声で、
沖田さんが父様を斬り捨てた。

「止めろっ!!薫!!」

薫は、私の肩あたりまで斬ったあと、
走ってくる沖田さんへ振り返った。

グサッ


薫は、地面に倒れ、絶命していた。

そして、沖田さんも倒れた。
心臓に刀が突き刺さっていた。

「沖田さん!!」

沖田さんは微笑んで、私の頬に触れた。

「さっき、言ったよね?
僕のことが、好きだって……。

もう一度、聞かせて?」
「好きです!
沖田さんが大好きですっ!!」
「寂しい、よ…。
君と、離れたくない……。」
「私も……、
沖田さんと離れたくない……!」
「声を……、聞かせ…、て……。」


沖田さんの手が、私の頬から離れ、
瞳は光を失っていた。

私が望んだのは、
こんな未来じゃなかった……。



暗い闇に、私の泣き声だけが響いた……―――。




end
沖千で、BADENDでした。
色々と原作と、違っている箇所もあると思いますが、広い目で見て頂ければ幸いです。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ