小説
□狂気
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……思い通りにならないのであれば、
すべて壊れてしまえと思った。
それが可愛い妹でも…。
俺はただ憎かった。
俺を虐げた奴ら、
俺を馬鹿にした人間、
のうのうと生きてきた西の鬼、
俺をこんなにした運命、
そして……、
俺の事を忘れ、一族を滅ぼした人間を慕う妹。
全部まとめて地獄へ落ちてしまえばいいと思った。
だから、俺を虐げた、馬鹿にした奴らを
地獄へと落してやった。
その時込み上げてきたのは、悲しみなんかじゃなく、
嬉しさだった。
俺を虐げたりするから。
そう笑わずにはいられなかった。
そして、市中で巡察に同行している妹に会った時、
あいつは、妹は、何も覚えていなかった。
人間が何をしたのか、
何故、雪村家が滅んだのか。
運命というものは、不公平だ。
妹は女鬼として生まれ、
そして、可愛がられた。
なのに、兄である俺は、男鬼であるというだけの理由で虐げられた。
自分の境遇について考えると、妹を憎まずにはいられなかった。
だからこそ、俺は……
妹の最も慕う沖田に変若水を渡した。