小説
□狂気
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最初はただ、生き別れた妹が気になった。
場合によっては、助けて守ってあげたいと思った。
でも……、
妹は沖田によって守られていた。
何でなんだ?
……俺は、誰にも守られず、守ることすらも許されないのか?
ずっと新選組に守られてきた千鶴を見て、
可愛い妹にも、同じ思いをさせてやりたいと思った。
「お前は、何故、兄である私が、
お前が大事に想う沖田に変若水を与えるのかと聞いたね。」
そんなのは簡単だ。
「……全然分かってないね、おまえ。
兄さんはお前の親しい人間にだからこそ、
変若水を渡したんだよ。」
千鶴の顔が憎しみに染まる。
そうだ、もっともっと、お前には苦しんでもらわなきゃ。
俺が苦しんだ以上に……。
そんなお前の顔が可愛くてしょうがない。
沖田は正直にいうと、それほど関係ない。
ただ、お前が好いていたから。
沖田はお前に巻き込まれただけなんだ。
その事実で、さらに苦しめばいい。
本当は、一番にお前を想っていた。
ずっと、ずっと守りたいと思っていた。
俺はどこで道を間違えたんだろう?
答えなんてないのかも知れない。
千鶴、お前は俺をどう思っていた?
俺は、お前を愛していた……。
沖田に心臓を貫かれた俺は、ただそう思った。