空知らぬ雨

□押し黙る
1ページ/2ページ





茶屋のある村に戻ると、
稲穂村について訊いて回ったが、

奇妙な事に、
目を泳がせたり
そんな村は聞いた事が無いと言って
何も答えず足早に文次郎達の元から
去って行く者ばかりだった。







「どうなっているんだ?
どの村人も、稲穂村の名を出すと、
言動がおかしくなる」


4人は情報収集を中断し、
木の下に腰を下ろして話し合っていた。


「明らかに稲穂村を知っている様なのに
なぜ何も話してくれないのだ?」

「やっぱりあの女の村、
いろいろと事情がありそうだな…
どうする?」

「……少女を見かけたと教えてくれた茶屋の主人に、
もう少し話を聞いてみよう…」


4人は再び立ち上がると、茶屋へ向かった。








茶屋の主人は
再び現れた4人を温かく迎え入れた。

4人は長椅子に腰掛け団子を頼む。


「やあ、また来たのか。
あの小道の先には何かあったかい?」

「ああ、村があったよ」

「お爺さんはあの小道の先に
何があるのか知らないのか?」


小平太は出された団子を
頬張りながら訊ねた。



主人は店の奥で
お茶を淹れながら答える。


「小さな村があるという噂は聞いていたが…。
どんな村だったのかね」


留三郎が鋭く目を光らせて、言った。


「稲穂村、という名の村だ」


その瞬間、
主人は茶を湯飲みに注ぐ手を止めた。

茶屋にいた他の客までもが
僅かながら反応したのを、
4人は見逃さなかった。



少しの間沈黙が続き、
居心地の悪い空気が店内に満ちた。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ