夢小説

□移ろい易きは秋空の如く
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用具倉庫の側で
ずっと探していた彼を見つけ、
はやる気持ちを抑え
私は走り寄った。

「ねえねえ!
告白する事に決めたよ!」

「ああ」

「明日の昼休みに、
薬草園で言う事にしたの!」

「ああ」

「……聞いてる?」


留三郎くんは、
私がせっかく大事な報告をしているのに、
私の顔を見ようともせず
用具の修理をしながら
空返事するばかりだ。






実は私は
伊作くんに想いを寄せている。


しかし何も行動できないまま
もうかれこれ1年経った。



これでは進まない!

と、私は自分を奮い起こして
伊作くんの級友である留三郎くんに
恋の仲立ちを頼み込んだのだ。


私の不憫さに
留三郎くんもアドバイスをくれたりと
いろいろ協力してくれていた。




そして明日伊作くんが
昼休みに1人で薬草園の手入れをすると
乱太郎から聞きつけ、
ついに告白を決意したのだ。




そしてその事を
留三郎くんにも伝えに来たのに…






「…あのね、それで留三郎くんには
伊作くんが薬草園にいる間
他の人が来ないように
見張っててほしいんだけど…」


ためらいがちにそう言うと、
留三郎くんは釘を打つ手を止めた。

そして振り返り、
私の顔をじっと見る。


「悪ィそら、
俺、もう協力できねえ」

「どうして!?」


あんなに真剣に
私の相談にも乗ってくれていたのに…

もしかして何か悪い事したのかな…


「…私、気を悪くするような事
しちゃったのかな…
なら謝るね、ごめ」

「そんなんじゃねえっ!」

「っ…」


強い口調で否定され
体がびくっと震えた。


留三郎くんは途端に
眉を下げ、戸惑うような顔を見せた。


「あ…違う……
怖がらせてどうすんだよ、俺…」

「違う、って…?」


私が半泣きの状態で訊ねると、
留三郎くんはますます眉を下げた。


「あー…
俺が協力できねえって言ったのはだな…
つまり…、








お前が伊作のものになるのが
許せなくなっちまったんだよ…」




「……それって…」





そして無言のまま
共に顔を紅潮させる留三郎くんと私。





たったこれだけのやりとりで、
一気に留三郎くんに
気持ちが傾いてしまった私は
狡い女でしょうか…?






END





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