夢小説

□用心棒
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「はぁーやっと着いた!」


食堂のおばちゃんが
ぎっくり腰で買い出しに行けなくなり
くのたま達で分担して
手伝う事になった今日、

無論私も例外ではなく
こうして市場のある村へやってきた。




「おばちゃんは普段
1人でこなしてるんだから
大変よねー…」


そう言いながら
買い物のリストを片手に市場を探す。


「こっちかな?」


長屋に挟まれた細い裏路地に入り、
中程まで来た頃

頭上に気配を感じた。





すぐに見上げようとした瞬間、
その気配が背後に移る。


まずい、と思った時には
首に腕が掛けられ
がっちりと体を押さえ込まれた。






男の腕だ。
しかもかなり鍛えられていて
振りほどけそうにない。





「銭を頂こうか」


低い声で男が言う。



こんな所で盗賊に遭遇するとは
面倒な事になった。

男には悪いが私も暇ではない、
今日の夕食がかかっている。
苦無で軽傷を負わせて
隙を見て逃げよう。




私はそう考えると、
顔を動かさないまま
こっそりと懐の苦無を引き抜き
後ろの男の脇腹を突こうとした。





キンッ






鋭い金属音に、硬い感触。

はっとして手元を見ると
私の持つ苦無の先にはもう1本の苦無…




「残念だったな。
…俺も、忍者だ」

「!!」




まさか…そんな…っ

忍者に襲われるなんて思わなかった。



殺されるかもしれない、と
私は身を強張らせた。







すると、
ふいに男が笑い出した。


「…ぶふっ、ははははっ…
まだ解らねえのか?
俺だよ、俺」

「その声…

留三郎!?」

「ちょっとした悪戯だよ」

「悪戯って…
悪戯にも節度ってもんがあるでしょ!
ばかあっ!」

「悪い悪い。
お前が怯えてるのが
面白かったからよ」

「本気で殺されるかと
思ったんだから…っ」


緊張が解けて安心したら
一気に涙腺が緩んで
泣きそうになってしまった。




けれど留三郎なんかに
涙を見せてやるか、と思い
飲み込んだ。




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