夢小説

□一つ屋根の下 〜は組〜
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「ゴ…ゴキブリが居るのーっ!」




「ええっ!?」

「……そんな事かよ…」




一気に肩の力が抜けた。
呆れる2人に、そらは喚く。



「そんな事って何よ…っ!
あんな恐ろしい生き物が
私の部屋に居るのよ!」

「平気で上級生に罠仕掛ける女が
ゴキブリなんか恐い訳ねえだろ」

「恐いもんは恐いのーっ!」


戸を押さえる力を緩めず
そらは叫んだ。




「…まあ大抵の女の子は苦手だよね」

「さすが伊作…解ってる…!」

「伊作、女の子なんてどこにいるんだ?」




そらは眉を上げ
からかう留三郎を強く睨んだ。
いつもなら飛び掛かってくるところだ。


しかし今日は違った。
また泣き顔に戻ると、
か細い声で言った。


「…いつもちょっかい出してたのは
ごめんなさい……
謝るから、退治して…」


「うっ…」


今まで見た事も無い
しおらしい様子のそらに、
留三郎は怯んだ。





何だこのギャップ…
ちょっと可愛いとか
思っちゃったじゃねえか…!





「……解ったよ、退治す」

「退治するから、
代わりに条件付けていい?」

「えっ、条件…?」


退治を引き受けようとした留三郎を
伊作の言葉が遮る。




なるほど、
もう悪戯するなって
言うつもりだな、

と考えながら
留三郎が伊作の顔をちらりと見ると、

伊作はにこやかに笑っている。





伊作が何か企んでいる時の笑顔だ。


嫌な予感…。





「条件って何?」

「あのね、
今度一緒におふ………うげっ」


留三郎は伊作が言い終わらないうちに
頭をグーで小突いた。



「何するんだい、留三郎。
舌噛んじゃったじゃないか」

「……お前、今すごく
いかがわしい事考えてただろ」

「何の事?
お風呂に入ろうって
言おうとし……ぐはっ」

「だーかーら!
それがいかがわしいっつってんだ
馬鹿野郎!」


こいつは時々
びっくりする程大胆に
変態発言するから困る…。




「ねえ、2人共
何こそこそ話してるの?」


そらは早く
ゴキブリをどうにかしてほしくて
2人を急かした。



「ああっ、いや、何でもねえ。
今退治してやるよ」

「ありがとう…!
あれ、条件っていうのは?」

「バッカ!
いいんだよそんなもん!」

「?」


顔を真っ赤にして怒鳴られて
そらは首を傾げた。

留三郎の横では伊作が
もったいないなー、と
ぶつぶつ言っている。




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