夢小説

□一つ屋根の下 〜い組〜
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「……やむを得ん、
文次郎、私はこのまま部屋で寝るぞ」

「なっ!?
正気か、仙蔵!」


目を見開いて驚く文次郎だが、
仙蔵は涼しい顔で言った。


「起きているそらよりは
まだ始末がいいかもしれん。
それに、私は早く床につきたいのでな」

「確かに……」


実習で疲れている文次郎は
一層目の下の隈が濃くなっている。

しかも昨晩は会計委員会で
徹夜した身だ。



さすがに今夜は布団で眠りたい。




「よし、布団を敷くか」

「うむ。
文次郎、頼んだぞ!」

「…お前もやれよ……」


文次郎も部屋で寝る事を決め、
忍び足で押入れに近付いた。

そして敷布団を
降ろそうとした時だった。







「……何してんのぉ?
もんじー…」





ぎくり、と
身を固くさせる2人。
冷や汗が垂れる。



やばい、やばすぎる、
そらが起きた……っ!





「ふぁー…頭痛い…
あれ、せんぞーもいるじゃーん。
2人して夜這いにでも来たのぉ?」


身を起こすと
酔った声でからかうそら。




「んな訳無いだろ!」

「そら、ここがどこだか
解っているのか?」

「えー知らなーい…」


そう間延びした声で答えながら、
押入れの前で敷布団に手を掛けたまま
動けずにいる文次郎の足にしがみつく。


「もんじーぃ…」

「バカタレェェェ!
何するんだ大河内!!!」


今にも頭の血管がぶち切れそうな程
顔を真っ赤にして怒鳴る文次郎だが、
酔ったそらには
全く効き目が無いようだ。



「怒んない怒んない。
それとも…
あたしに触られるの、嫌……?」


文次郎を熱っぽい視線で見つめるそら。

反応できずに
完全に固まっている文次郎を見て、
仙蔵は呟いた。


「…どうやら酔ったそらは
起きている時の数千、いや数万倍は
始末が悪いようだな……」

「ぶ、ぶ、ぶ、分析してねえで
こいつを引き剥がすの手伝え仙蔵!
うわっ…
ど、どこ触ってんだ!?
やめろ!大河内!!!!」



足をばたつかせようにも、
下手に暴れれば
そらが怪我をする。

しかし語気を強くしても
一向に離れる気配が無い。




「……文次郎、私は
屋根の上ででも寝る事にする。
まあ、達者でな」

「てめっ!
裏切るのか!?」

「とにかく私は早く眠りたいのだ」



そう言って踵を返し、
部屋を去ろうとした時だった。





「うわぁあっ」


いつの間にか仙蔵の足に
かぎ縄が絡み付いていて、
仙蔵は派手に躓いた。


「い、いつの間に…」

「どうやらお前も道連れみたいだな…」

「へへへー…
せんぞーも離さないぞぉー」



そらはかぎ縄を片手に、
文次郎の足にぴったりしがみつき
焦点の定まらない目で笑った。




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