夢小説

□疲れた時は
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「今日は会える?」


少し遅めの夕飯を食べながら、
正面に座る彼に訊ねる。


「悪い。
今夜は会計委員会がある。
明日中に決算を
済まさなくてはいけなくてな…」


彼、文次郎は、
ばつ悪そうに答えた。

本当は怒りたい。
でも文次郎が悪い訳じゃない。


もしここで私が、

"今夜こそは一緒にいたい"

と一言甘えたら、
文次郎は委員会を
無理矢理にでも延期して、
時間を作ってくれるのかな…。




そう考えながらも、
ぐっと想いを飲み込んで、
私は優しく笑いかけた。


「そう…。
委員会ならしょうがないね。
徹夜にならないといいね」

「…ああ」

「…じゃ、あたし、もう部屋に戻るね」

「すまん」


いいよ、と言って席を立ち
夕食のお盆を片付けると、
急ぎ足で部屋に向かった。






文次郎に想いを打ち明けられ、
恋仲になって数ヶ月経つ。


初めから
文次郎がギンギンに忍者してる忍たまで、
鍛錬バカで、
会計委員会への熱の入れ方も
尋常ではなくて、
恋人らしい甘い生活など
無縁だという事は
理解していたつもりだ。




それでも、
さすがに1週間ずっと
一緒に過ごす時間が取れないと
不満に思ってしまう。


「もんじのばーか…」


小さな声でぼやく。
私はずっと一人部屋なので、
愚痴を溢せる相手もいない。

仕方なく布団を引きずり出すと
私は横になりふて寝した。








どのくらい経っただろう。
深夜、ふと目が覚めた。



もんじはまだ算盤を弾いているのかな…。


ぼんやり考えていると
目が冴えてしまった。


「…勉強でもしよう……」


何となく思い立つと
ろうそくの灯りの下、
教科書を開いた。




欠伸を噛み殺しながら
遁術の復習をしていると
部屋の外に気配を感じた。


こんな時間に誰だろう。

相手の動きを読もうと
息を止めてじっとしていると、
声を掛けられた。


「そら…起きてるか…?」

「え…もんじ…?」




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