夢小説
□ひととき
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「伊作ーお茶ー!」
「僕はお茶じゃないよ」
「違う違う。
お茶淹れて?」
「僕はお茶汲みでもないんだけど」
僕が保健委員の当番の日。
授業の無い午後の間は
いつもこうしてそらが、
保健室に遊びに来る。
そしていつの間にか
そんなそらのために
僕がお茶を淹れるのが
習慣みたいになっている。
「そらはどうして
怪我した訳でもないのに
保健室に遊びに来るんだい?」
「またそれー?
伊作っていっつもそれ訊くよね」
「いっつも気になるの。
ねえ、どうして?」
「だからー、
保健室って落ち着くからだってば。
特に、伊作が当番の時」
よ く 言 え ま し た 。
僕はこっそりちょっと微笑む。
それが聞きたくて
いつも訊くんだ、そら。
「理由になってないじゃないか。
はい、お茶入ったよ」
「えへへーありがと」
「これからはせめてお茶菓子でも
持ってきてよ」
「えー…中在家くんにぼうろでも
作ってもらう?」
「できればそらの手作りで」
「それは痺れ薬を混ぜろっていう
前振り?
それとも冗談?」
「割と本気だったんだけど?」
ゆっくり、ゆっくり、流れていく、
そらとのひととき。
END