夢小説

□待ち暮らす
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「私は女だから、
やっぱり誰か男の人を迎えた方が
都合がいいだろうからって」







息が詰まる思いがした。
激しく胸が鼓動する。


「む、婿を貰うって事か…」

「うん」

「…急だな」

「うん」



相変わらず空を見上げるそら。

俺はどうすればいいのか
途方に暮れていた。







まさかこんな形で
俺の想いが打ち砕かれようとは。





いつからだろう、
そらを見る目が
友を見るそれではないと
気づいたのは。




俺はそらを好いていた。




"俺たちは6年生、卒業も近い。

互いに就職した直後は
なかなか落ち着けないだろう。


だが、忍の仕事が安定したら、
夫婦になってくれないか"



そう伝えようと考えていた矢先の
そらの見合い話に、
俺は動揺せざるをえない状態だった。







「文次郎…、」

「……ん?」

黙り込んでしまった俺の名を、
そらが呼ぶ。




「私ね…不安なの…」




今度は空を見ずに、
真っ直ぐ俺の目を見て言った。


俺ははっとする。



何を自分の事ばかり考えている?
突然兄を亡くし、
くの一の夢を諦めて
婿を貰わねばならない
そらの方がよほど辛いというのに。




それなのにそらは、
気丈にも涙を堪えていた。



俺は自分にしてやれる事が
やっと解った。



「そら、泣きたかったら泣け」

「……でも、」

「お前のそんな顔、見るに耐えん」

「…ううっ…もんじろ…」


目に涙を一杯に溜めて
そらが俺の胸に飛び込んできた。


そして
声を上げて泣いた。





「私だって、お店が無くなるのは嫌…
でも、見合いなんてしたくなかった…
お兄さんの弔いもまだなのに…!」

「ああ」

「くの一だって…
本当はなりたかった……」

「ああ」


震えるそらの肩を
そっと抱きながら
そらの涙と弱音を
全部受け止めてやった。




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