夢小説

□待ち暮らす
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「そら!
くの一になるのやめるって
本当なのか!?」


ずっと探していた大河内そらを
やっと鐘舎の中に見つけると、
俺は早口で訊ねた。

そらは、
目を丸くすると、
少し俯いて答える。


「そうなの。
文次郎、もう知っちゃったんだ」

「…もう決めたのか……?」

「うん」




信じられない。


あんなに熱心に授業に取り組み、
鍛錬も欠かさずにやっていたのに
なぜ…





俺が呆然としていると、
そらの方から
理由を話し出した。




「私、実家の問屋を継ぐ事になったの。
曾祖父のさらに前の代から続く
古いお店だから、
途絶えさせたくないのよ」

「継ぐって…
お前、兄貴がいるんだろう?」


以前にも大河内家の話は
聞いた事があった。

確か5つ離れた兄貴がいたはずだ。


親を継ぐのは長男の兄ではないのか?



するとそらが重そうに
ぽつりと言った。


「お兄さんね…、亡くなったの…」

「!」


そらは半鐘に少しもたれ、
空を見ながら続ける。


「3日前に両親から文が来たの。
村の近くで戦があった時に、
お兄さんが巻き込まれて
亡くなったって。
それで、私に継いでほしいって」

「そうか…」


何も気の利いた事を言ってやれない。
こういう時、
自分の不器用さが堪らなく嫌になる。



さらに続くそらの言葉に
俺は絶句した。



「次の短期休暇に村に一度帰ったら、





見合いをするの」




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