夢小説

□おまじない
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「小平太、」

「む?」

「絶対怪我しないでね」

「もちろんだ!
いけいけどんどんで
絶対怪我しない!」

「……心配…」

「なぜだ?」

「いつも突っ走ってるから」


そらは不安げに私を見る。


実習で怪我しないなどと
断言するのが無理な事は
重々承知しているはずだ。


それでも約束せずにはいられない。
そらは心配性なのだ。





「あ、そうだ、小平太、
私新しいおまじないを聞いたの」

「おまじない?」

「うん、
怪我しないようにするおまじない。
小平太、
いつも持っているもの何かある?」

「いつも持っているものか…」



懐を探ると、

昼間食べた饅頭の懐紙を丸めたのと
何となく拾った小石と
2点のテストが出てきた。


どれもいつも持っている訳ではないが…


「ああ、これならどうだ?」


そう言って取り出したのは、
塹壕を掘る時に愛用している
1本の苦無だった。


「え…いいけど、
野外演習で使わない?」

「平気だ。
さっき予備を用意した」


そう返答すると、
そらの顔がぱーっと明るくなる。


「じゃあ私は……」


そらは自分の髪に触れ
ひとつに結いまとめていた
細いバンダナを取った。

肩までの髪がほどかれて
ぱさりと落ちる。




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