夢小説

□低嶺の花
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その日私は
食堂で遅めのランチを食べていた。
昼休みもそろそろ終わるので、
食堂にいる生徒は少ない。


早く食べなきゃ、
とご飯をかきこんでいる時、

食堂に入ってきた立花仙蔵が
こちらに近付いてきて、
静かに私の正面の席に座った。





「?」



私は茶碗を持ったまま
ぽかんとしている。


仙蔵とは同級生として
10年近くの付き合いだが、
私なんかに何か用だろうか。






仙蔵はさらりと長髪を掻き分けると
私に訊ねた。


「大河内そら、
今日のくのたまの授業が終わるのは
いつ頃だ?」




ああ、そんな事か。
と思いながら答える。


「今日の午後の授業は
歴史だから長引かないよ。
申の刻には終わってると思う。」

「ふむ。
八つ時の頃だな」

「くのたまの誰かに何か用があるの?」


私は最後の味噌汁を啜りながら
訊ねた。


すると仙蔵は
ふふっと妖しく笑った。




「色を仕掛けるのだ」







ぶふっ




私は思わず味噌汁を噴き出した。

慌てて懐から手拭いを取り
卓上を拭く。



仙蔵にかからなくて
よかったー…




「何をそんなに驚いているんだ?」

「何って、
仙蔵が変な事言うから…」

「私は至って本気だ」


口元を拭いながら
動揺している私とは正反対に
涼しい顔で仙蔵は笑っている。




「で、相手は誰なの?」



仙蔵はその冷静沈着ぶりと
火薬を扱うプロ顔負けのテクニック、
そして何よりその美しい顔立ちから
くのたまからモテモテの男だ。


そんな仙蔵に色仕掛けしてもらえる
ラッキーガールが一体誰なのか
是非とも訊きたい。




身を乗り出す私に、
仙蔵はすまして答えた。


「それはな、











山本シナ先生だ」




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