オメルタ★狼と愛犬

□Only you
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「待たせたな……って、おいおい…」

風呂上がり、バスローブを羽織ったJJはドアを開け、寝室を見て苦笑した。
先に汗を流してJJが戻って来るのを待っていたはずの男は、清潔な白いシーツの敷かれたベッドの上で瞳を閉じて寝こけていた。
キングサイズのベッドの上に悠々と両足を投げ出し、はだけたバスローブから規則正しく上下する胸元が覗いている。
鋭く、見る者に畏怖を与える強い光を秘めた双眸は長いまつげに覆われ、牙を収めた男の寝顔は子犬の様に可愛らしく見える。


「おい、霧生」

試しに呼べど、応えなし。
唯一返って来たのは健やかな寝息だけ。
完全に爆睡中だ。
腹の上に乗っけた右手には仕事の資料と思しき紙片が握られ、床の上にも数枚のそれらが散らばっていた。
JJを待っている間、手持ち無沙汰になった霧生はどうやら仕事をしていたらしい。
部屋にはテレビもあるのに、寛いで過ごすより、仕事をして有意義に時間を使う事を選ぶあたりが仕事熱心な霧生らしい。
仰向けで、警戒心の欠片もない無防備すぎる霧生にJJはやれやれと肩をすくめ、ベッドへと近づいた。

仕事がひと段落付いていつも通り霧生と落ちあった後、数時間だけだが互いの予定が空白だという事が判明し、その足で近くのホテルへ直行したのだ。
許された短い時間を惜しむ様に、部屋に雪崩れ込んでの久々の逢瀬。

ここしばらく声だけで、久々に見た愛しい恋人の存在に心は酷く高揚したが、互いに仕事帰りという事もあり、とりあえず汗を流してからという運びになった。
が、平素からキングシーザーのボスである瑠夏の右腕として辣腕を揮っている多忙な男は、疲れも半端ないらしく、JJが戻って来る前に寝てしまったと言う訳で。

気配に敏感な男がJJが近づいたことにすら気が付かずに爆睡を決め込んでいるのは、自分に対して絶対の信頼感を持っている証拠だし、彼のあどけない寝顔を見られるのは恋人としての特権だという優越感もある。
たが、久々に会えて、少なからず心を踊らせていたJJとしては、少々やるせない。

「霧生」

寝かせておいてあげたい気持ちが半分と、起きて欲しい気持ちが半分で、JJはもう一度名前を呼んだ。
すると、霧生がむぅぅと、小さく身じろいだ。
起きたか?と、思ったが単に寝言の様なモノだったらしくて、起きる気配はない。
むにゃむにゃと口を動かして、薄っすらと唇を開け、寝ることに没頭している。
JJは、がくっと肩を落とした。

「……呑気なもんだな。人の気も知らないでーーー全く、これをどう処理しろっていうんだ?」

風呂にはいる前から、いや、霧生の顔を見た瞬間にすでに昂ぶっていたのだが、それを更に霧生の寝顔に煽られたせいで、JJの下肢のモノが本格的に起き出してしまっていた。

「なぁ、霧生、頼むから起きてくれ」

ボソッとつぶやいた切実な言葉は、敢え無く寝息の前に陥落する。
仕方なく、JJは床に散らばった資料を拾い上げ、ついでに霧生の腹の上にあるそれとともにベッド横のデスクに片付けた。

「これだけ爆睡かましてれば、銃も形無しだな。まぁ、俺も同じ様なモノだが」

枕元に剥き出しで置いてある霧生の愛銃が目に付き、その存在に自分を重ねて思わず同情してしまう。
使ってくれる相手がいない銃など、ただの置物だ。

仕方なくJJは濡れた髪をタオルで拭い、他にすることもなくて、自らも霧生の横に転がった。
誰かの隣で寝ることなどほぼ無いと言っても過言ではないのだが、霧生が横にいるだけで不思議と落ち着く。

横を向けば、JJの視界に霧生が飛び込んでくる。

寝顔を見つめていると無性に彼に触れたくなって、JJは腕を伸ばして霧生の頬に触れてみた。
シャープな見かけより、やわらかな手触りが心地よくて、何とも言えない。

「ん……」

頬を撫でていると、霧生が身じろいだ。
起こしたのかと危惧したが、霧生はJJの手に頬を摺り寄せて、にへっと心地よさそうに微笑んで、睫毛を伏せていた。

幸せそうな霧生の顔に、JJの表情も釣られて柔らかくなる。

その寝顔に吸い寄せられる様にして、JJは薄く開いた霧生の唇にそっと自分の唇を重ねていた。

ただ、触れ合うだけのキス。

なんの下心もない…淡い感情に突き動かされた行動だったのだが……一度霧生に吸い付いてしまった唇をなかなか放せなくなってしまう。

「少しだけなら、……いいか?」

当分起きる気配もないしと言い訳し、そのままJJは上体を起こして霧生に跨って細い首筋に唇を滑らせた。

舌を擽る甘い感触に歯止めが聞かなくなったのは、後から思えばこの辺りからだった様に思う。
首筋に吸い付き、気がついた時には、JJは霧生のバスローブの前を完全に開かせ、胸元を晒させていた。

寝込みを襲う趣味は無い。

たが、胸で息づく両の突起が、触って欲しいと訴えている様にJJにはみえた。誘惑されて、つぎの瞬間には唇を這わせていた。

「んっ……ぁん」

舌先で湿らせて、ねっとりと舐めあげると、霧生はむず痒かったのか小さく声を漏らした。
普通なら起きてもおかしく無いのだが、霧生は起きない。

(そう言えばこいつ、一度爆睡したら滅多なことが無い限り起きないんだったな)

そもそも警戒心の強い男が爆睡すること自体が珍しくて失念していたが、ここにきてようやくその事を思い出す。寝込みを襲っている様で少し後ろめたさがあったのだが、今なら多少弄っても大丈夫かと開き直り、JJは芯を持ち出したそれをさらにちゅっと吸い上げた。

硬く、凝って行く乳首に芯が通り、綺麗なピンク色から艶かしい赤に変じた。
心なしか霧生の頬がほんのりと火照り出す。

その反応が楽しくて更にねぶっていくと、もぞっ…と、霧生の膝が動いた。
そして、腰を突き出して、霧生はいつの間にか隆起し出していた雄をJJの太ももに擦り付けて、腰を揺らした。

ーーーこっちも触って欲しい。

そう訴えられているような霧生の素直すぎる仕草を、JJが無視できる訳がない。

「くそっ、無自覚に煽りやがって……可愛すぎるぞ、霧生……」

JJとて男。
霧生の行動は無意識だし、無自覚。誘惑しているつもりはないと分かってる。が、それでも止められない衝動という物がある。

JJはバスローブの裾を捲りあげ、霧生の下肢を露わにさせた。

下着は、つけていない。

だから、心許ない布切れで覆われただけの霧生がすぐ様JJの視界に飛び込んで来る。

「……ん?…んっ…んぅ…」

JJが霧生の雄を喉元まで一気に咥え、霧生が何かを感じて身を捩った。
暖かい粘膜に覆われて、口の中の霧生がピクンッと鼓動をはねさせる。

流石に起きるかもしれない。

だが、もうそんなことJJにはどうでも良かった。
有るのは霧生を感じさせたい、それだけだ。
舌を使って根元から舐めあげ、裏筋をなぞる。

「…んんぅ、ふっ……ん…」

欲望を刺激されて、堪らず霧生の腰が震え出す。
その反応が楽しくて、JJが執拗に、だが優しい力加減で扱きたてた。
次第に夢の中にいる霧生の息が、熱い物を含んだ吐息に変じる。

霧生の眦が赤く染まっている。

含んでいた霧生は容積を増して、咥えるのが困難な大きさにまで成長し、先端から滲み出てきた汁がJJの舌先を苦く濡らした。

「ん…ぁ……ふぅ…っ」

霧生が背をそらして、イヤイヤをする様に首を左右に震る。
シーツの上で短い髪が擦られパサパサと音を立てた。

「あっ……んっ…んっんっ」

すがるモノを求めて伸ばされた霧生の手が宙を彷徨う。
が、何も縋る物がないと分かるや否や、彼はシーツをぐしゃっと握りしめた。
霧生の腰が、引っ切り無しにビクビクと跳ね上がる。

ーーおそらく、絶頂が近い、


今更ながら寝ている相手に無理やり絶頂に追い上げるのもどうかと思ったが、ここでやめた方が辛いだろうと言う結論に達し、JJは霧生の先端をジュッと力強く吸い上げた。
途端、霧生の太腿がぶるぶると痙攣し出し、そして、霧生の眉根がくっと寄った。

「んぅっ……ぁっ、んふぅ、あっ、気持ちぃ…、んっ…んふぅ…」

愉悦が滲んだ……霧生の口から押し出された甘い声に、JJも酔わされて行く。
ここまでされても起きない神経の図太さはあっぱれだが、うわごとの様に紡ぎ出される声はあどけなくてずっと聞いていたくなる。

可愛い奴だな……と、思ったのは、ーーーだが、この時までだ。

「あっ、んぅっ…あっ、……もっと、あっ、いいっーーーーボスぅっ…」

「…………?!」


(今、ボス……って、言ったよな?)

一瞬、自分の耳を疑ったが、聞き間違える筈は無い。
霧生は『ボス』と、確かに言った。

彼がボスと呼ぶ人間は、勿論JJでは無い。

彼が『ボス』と敬意を込めて呼ぶのは、キングシーザーのトップである瑠夏・ベリー二だけだ。

そう、JJと出会う前、霧生がぞっこんだった相手である。
しかも、それは、つい最近まで。

JJの額に、ビシッと青筋が浮かんだ。

瑠夏がどんなに魅力あふれる男であるかはJJだって知っている。
霧生が惚れるのも、無理はないと言う事も理解できる。
だが、いくら以前惚れていた相手であろうと、恋人に抱かれながら他の男の名を呼ぶなど言語道断だ!

いかに寛大な男であろうとブチ切れて当然。

もちろん、JJはブチ切れた。

(霧生……お前っ、いい度胸だなっ!)

JJの双眸が、物騒に光る。
JJは愛撫していた口の中の霧生を、ぺっ……と吐き出した。

相手が疲れているから、寝かせておいてやろうなどと言うやさしい気持ちは、もうどこにも無い。

あるのはーーー激情に駆られた凄まじい嫉妬心のみ。

(ふっ、これは、仕置が必要な様だな……)

亭主の留守中に愛人といちゃこく不貞な妻に相応しい仕置ーーーではないけれど、それに近い立場であるJJの怒りは半端ない。

JJはガシッと霧生の両足を掴み上げ、無理矢理すんなり伸びた両足を開脚させて胴をねじ込んだ。
上げさせた霧生の腰のしたに枕を差し込み、角度を調整させて、下準備を終える。

JJはパンパンに膨らんだ己の雄を、眼下にある小さな蕾へと定めーーー串刺しにした。

「覚悟しろよ、霧生。奥まで、きっちり飲み込んでもらうからなっ!!」
「へ……?…なっ、ひっ?!やっ、ひっーーーやあぁあああーーっ!!」

一喝された途端、いきなり襲ってきた痛みに霧生の瞳がカッと見開かれ、健やかな寝息を立てていた唇から絶叫が迸った。

ーーー何が起こっているのか分からない。

困惑し、潤いも与えないまま貫かれて痛みに涙を浮かべた霧生は、全く状況が分からずただ、叫びまくった。

「やっ、…ぁあっ、あぅうっ、痛ぃいっ」

突然の目覚めは、しかし、強烈すぎて霧生の思考回路が全くついていかない。

熱く、猛り狂った肉棒に内臓を焼かれている様な感覚だけは、はっきり分かるが、なぜこんな事になったのかがまるで理解できない。

無理矢理突っ込まれたそれは、熱くて、大きくて、圧迫感が半端ない。

「ようやくお目覚めだな、霧生」

混乱をきたしていた、脳に響く声に、ようやく霧生は自分の中の相手が誰かを知る。

「J……J…?!お前っ、これは……なんの真似だっ?!」

潤んだ瞳で睨む霧生に、JJはふっと不遜に、艶やかに笑う。

「なんの真似か?教えて欲しいか?」
「是非とも…教えて欲しい…なっ!いい気持ち…で寝ていた恋人に、んっ、…こんな…無体な仕打ちをする理由が……あるのなら!!」

息を喘がせ、霧生が剣呑に言い放つ。
怒り爆発、と言った所か。

だが、彼の怒りなどJJのそれに比べれば屁でもない。

「理由なら勿論ある。お前には灸を据える必要があるみたいだったからな。それを実践しているだけだ」
「はっ?何言って…って、ちょ、やめろっ!あっ、ひぃっ、やめろっ、中…ちょっ、……まだっあっ、動かす…、なぁあああーーっ!」

言い終わる前に、霧生の言葉はJJによって封じられる。
JJは、霧生に腰をがんがんと打ち付け、容赦なく奥までえぐり立てた。

「や……めぇえっ、あっ、あっ、ふんん、やぁ、ああーーっ!!」
「おっと、まだイくなよ?イくのは、誰がお前の恋人なのか、しっかりと理解してからだ」

肉棒を中でこね回し、いつになく、暗い笑みを浮かべたJJに、霧生はぞくっと震えた。

俺、もしかして、寝ている間に何かしたのか?

思い出そうとしたが、寝ている時の事まで、覚えていられるほど優れていない。

これから、俺はどうなるんだ?

だが、答えを探す前に、また激しく揺さぶられてしまい、恐怖と、そして、困惑したまま、霧生は鳴き声を上げた。

ーーータイムリミットは、まだ当分先………。

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