オメルタ◆魔王と死神

□俺達のとある日常。
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宣言通り、さほど待たずして劉のモノが潜り込んでくる。
下からの挿入はあまり慣れていないのに、ズブズブと襞を捲りながら奥ふかくまで止まることなく突き進む感触に、俺の口から甘ったるい喘ぎ声が漏れる。

「はっ…ぁはぁあっ、……んふぁっ!」

絡み付く内壁を振り切り、劉のものが最奥まで到達した事を、俺は身体の奥深くで脈打つ鼓動で感じとる。
劉のモノがドクドクと荒々しく脈動すると、俺のなかが勝手に激しく呼応する。
理性が残っていれば別の感情を抱くのだろうが、今はただ気持ちよくて、俺はその脈動に酔いしれる。
最早、最初に感じていた痛みなどどこにもない。

「どうだ?お待ちかねのものの味は?」
「あ、あぁ。アンタのはデカくて、奥までみっちり嵌まってて……気持ちいい……」

偽りのない俺の言葉に、劉が満足そうに微笑した。背後からうなじをペロッと嘗められ、俺は官能的な刺激にゾクッと全身を震わせた。

「じゃあ、今度は貴様が役目を果たせ」

頷くと同時、劉と隙間なく繋がった腰をガッチリと背後からかかえあげられた。
静止したままの劉が、いよいよ動き出す。


「やぁっ、あ、…あっ、ァアあ!!」

長くまたされたせいだろうか。劉は優しさなど感じさせない荒々しさで俺を容赦なく犯す。入口近く、ギリギリまで引き抜かれたかと思えば、凄まじい早さで俺のなかを穿つ。

暴れ始めた劉の猛々しい肉茎にかき混ぜられ、俺はただ気持ちいいと声をあげた。
梓を人質に捕らえられ、強制的にこんな繋がりを持ち、劉の気の向くままに辱しめられているというのに、俺の脳には劉を恨めしく思うどころかただ快楽の二文字しか存在していなかった。
流されている自覚はあるが、拒みきれない弱い自分がいて。
俺は劉のモノに酔いしれる。
これ以上、劉に惑わされるわけには行かないと何度となく言い聞かせているが、なぜか俺は劉から目がはなせない。


「ひぁっ、…うぁっ、んんっ、…ァアあ!!」

背後で、劉の息遣いが乱れているの感じとり、俺は暗い愉悦が心に広がるのを自覚する。
この男を満足させられる人間はそうはいない。みな、劉に気に入られようと精を出すが、けっきょく劉の期待には答えられずに、一人、また一人と消えて行く。
だから、一時だけでもこの男を満足させることが出来る自分が、誇らしくすらある。
劉の執拗な突き上げに視界がぶれる。
下肢に与えられる刺激が全身を支配し、俺は自身を穿つもののことしか考えかれなくなっていた。

「ぁあっ、劉っ!……劉!!」
「ククっ、いやらしい顔だな、デスサイズ。そんなに私が好きか?」
「あ、ぁあっ、す、好きだ。んぁっ、俺はアンタが好きだっ!!」

どさくさに紛れて口走ったそれは、情事に流されただけの台詞ではない事を、劉は見抜くだろうか?
そんなことを思いつつ、俺は劉が望むように精一杯浅ましく乱れてみせる。

演技をする必要もないほど、劉は巧みに俺を追い詰める。

中しか触れられていないのに、劉のモノに中を抉られて、俺の屹立が喜悦の涙をひっきりなしにこぼし出す。
それはよく磨き抜かれた床をしとどに濡らしあげた。
内腿を伝って、愛液が結合部をぐっしょりとぬらし、劉の挿入をスムーズなものにしていく。
俺は劉に揺さぶられながら振り落とされないように片手でしっかりと自分を支え、自分の屹立を握った。


劉より先に出してはダメなのだと、肝心な言葉をしっかりと守るために。
すっかり劉の形を覚えた俺は、劉がそろそろ絶頂が近いことを感じとり、思いっきり締め上げた。
予想は外れていなかったらしく、劉が忌々しそうに舌打ちしたあと、グッと中のものが膨らみをます。

「貴様のなかに種付けしてやる。溢すなよっ!」
「ひぁああっ、….あ、んぁあっ…ハァッ!」

予想できていても、なかに放出された灼熱の波に、俺は震え上がる。
燃えるように熱いものが俺のなかに充満していく。
満たされるという優しい感覚より、やはり蹂躙されたという表現のが似合うそれは、だが、確かに俺をどうしようもなく感じさせる。
劉の迸りを全て受け止め、俺は自らの戒めを解いてやる。
とたん待ちきれなかった悦楽が血を沸騰させ、俺は思いっきり白濁をぶちまけた。


「…ふぁっ、…はっ、はあっ…ンァアァアッ?!」

余韻に浸りたかったが、弛緩してまともに動けなかった俺のなかから劉に屹立を抜かれ俺は支えを失いその場にくずおれた。優しくしてくれとは言わないが、少しくらいの気遣いくらい見せてくれてもいいだろうと、思わず愚痴りそうになる。

「おい、何を呆けている?後始末をしろ」
「ああ。」

いつもと変わらない辛辣な口調と共に先程まで咥えていた屹立を眼前に翳され、俺は従順に舌を這わせた。倦怠感に支配された身体は指を動かすことすら億劫だったが、弱音をはくわけにはいかない。俺は丹念に、ぺロペロと劉のモノを綺麗にしゃぶり、口からだす。
口のなかに青臭いものが充満したが、俺は唾液と一緒に飲み込んだ。
劉は、何事もなかったかのように着衣の乱れを整えた。
背中で流れる長い黒髪は艶やか過ぎるほ美しく、情事の痕跡など一切漂わせてはいない。

対して俺は髪は乱れ、全身に汗をおびたひどい有り様だ。特に下肢の状態は目を背けたくなる。俺は鈍く痛む腰を無視してノロノロと立ち上がった。

「少しは機嫌、治ったか?」

つい、聞いてみたくなって問いかける。と、劉が一瞬虚をつかれたかのような顔つきになる。が、次の瞬間、鋭く睨まれた。

「ふん、いつ私が機嫌が悪いなどといった?無駄な詮索などしてないでとっとと服を着ろ。そろそろ戻らねば、また宇賀神あたりにくどくど言われかねん」
「わかってるよ。急かさなくたって今いく」

劉にくどくど言えるやつなどいないが、あえてそれを突っ込まず俺は手早く後始末をする。なかに出されたものを取り敢えず掻き出して、ティッシュで拭き取る。まだ全身がベタついていたがシャワーを浴びる時間などくれるわけはない。

「おい、まだか?」
「もう終わる」

床に落ちた下着とスラックスを身につけ、俺は腕を組んでこちらを伺う劉のもとへと、近寄った。


―――家族とも恋人とも、そして奴隷とも違う不可思議な関係に、終止符を打つときが来るだろうかと、ふと劉の顔を見て思う。
体を繋げているがそこに確かな愛がある訳でもないし、心のそこから信頼できる関係でもない。
劉は俺を側におきながらいつでも銃を向ける事を躊躇わないし、俺もやつの命を狙っている。
どちらかこの歪な関係を終わらせるのだろうか?
劉が俺を殺すのか、それとも俺が奴の息の根を止めるのか。
もしくは第三者の手により、あっけなく終焉を迎えるのかもしれない。

それは明日なのか、一年後なのかは俺には分からない。

だが、当分の間は、この関係を続けていくのもいいかもしれないと、思ってしまう俺はやはりイカれているのだろう。

「遅いぞデスサイズ、きびきび歩け」
「分かってるよ、首領―――」


いつもより歩く速度を落としてくれている劉の微妙な気遣いに苦笑しながら、俺は劉の後を、微かな笑みを浮かべて追ったのだった。
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