陽光 その二
□知輪
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フォアマストに寄りかかっていたハヤテが、喚いた。
「あーもうっ。できねーっ。わけわかんね」
放り投げられ、甲板に落ちた鍵のようなものを、通りかかったヒロインが拾った。
「あ、これって、知恵の輪ですか?」
手の上に乗せて、眺める。
「なつかしいなあ……。おじいちゃんが、九連環というとても古い知恵の輪もってて、手品みたいに外すのよく眺めてたな…。これも、外れるんですか?」
笑顔で眺めるヒロインの横顔。
ハヤテが、目線を反らして言った。
「それ、やるよ」
「え?」
「どうせ、できねーし。トワと倉庫で拾ったもんだし。ヒロインにやる」
「いいんですか?」
「やるって言ってるだろっ」
照れて怒ったような言い方をするハヤテに、ヒロインは笑顔で礼を言った。
「ありがとうございます、ハヤテさん」
「それ、すげー難しいから」
ちょっと顔を反らして、ハヤテは船室の方へ去っていく。
ヒロインは、もらった知恵の輪をポケットに入れると、シンに頼まれたロープを持って、操舵甲板へ向かった。