陽光 その三

□分身
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油断していた、というのも少しおかしい気がする。

基本的に信頼できる仲間なのだ。

シンはため息をついて、目の前の自分を見た。

鏡の向こうから抜け出たような自分が、やはりため息交じりに見返す。

「そういえば、妖精の国だったか、ハヤテが鏡から抜け出た自分と戦ったと言っていたが…」

ふと、航海室の窓に映り込む二つの影へ視線を移動した左右対称のシンが、言葉を続けた。

「俺は、違うらしいな。お互いの考えや感覚が手に取るように分かるが…」

「あはは。無事に、均等に分かれたね?」

変に明るいソウシを、二人のシンが同時に睨んだ。

「「ドクター…」」

わずかに怒りを含んだ二人のシンを見て、ソウシがにっこりとする。

「ほら、この間、マッサージをしていた時にシン、自分がもう一人欲しいって言っていたからね。分身薬を作ってみたんだよ」

確かにそんなことを言った記憶があった。

ヤマトには分身の術を使うニンジャという種族がいるらしいという話題から、説明せずとも意思疎通して安心して仕事を任せられる自分の分身が欲しいという話題になった記憶がある。

「…飲む前に処理能力が倍になる薬だと」「言ってましたよね、ドクター?」

「さすがに、二人とも息がピッタリだね。お互いに感覚を共有しながら別々の場所で動けるはずだよ? 効果が切れたら、こっちのシンは消えちゃうからね?」

普段と逆、左目に眼帯をしているシンの肩を、ソウシが軽く叩く。

「なるほど。…それで、ドクター」「薬の効果が切れる時間は?」

探るように二人のシンがソウシを見た。

「私が試したときは、1ccで2分30秒だったからね。シンがさっき飲んだのは、100ccだよ」

「…つまり、理論上は250分」「4時間10分というわけですね?」

ソウシの説明から素早く計算したシンたちが頷いた。
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