陽光 その三
□鏡船
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よく晴れた穏やかな波の日だった。
左右から等間隔で並走してくる二つの船に真っ先に気づいたのは、見張り台にいたナギだった。
見張り台にいるから見える、水平線に乗ったスパンカーとも呼ばれる形の帆。
漁船に使われることの多い形の帆だが、漁船であるという保証はない。
まして、右舷にも左舷にも見えるとなると、何らかの意図が伺える。
舵をとっているシンの位置からは、どちらの船も見えないはずだ。
「おいシ…」
見張り台からシンにこの状況を告げようとした矢先、甲板に出てきたリュウガが、真面目な顔で見張り台を見上げ、ナギに言った。
「おい、ナギ、何か見えるか? さっきから、どうも勘が騒いでいけねぇ」
海賊王たるリュウガの勘は、神がかり的ですらある。
さすがだと関心しながら、ナギはリュウガに頷いた。
「今、報告しようと思っていたところです…」