帆船記T

□七日月
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 甲板で、トワが気持ち良さそうに寝転がっている。
 帆は全て畳まれ、マストの向こうに続く空が、その瞳に映っていた。
 我は海賊船の精霊シリウス。
 この船は、寄港中で、今、他の海賊達はいない。

「あ、そうだ。ナギさんに言われてた箱、運んでおかなきゃ」
 閑散とした船内を、一人、留守番として残ったトワが忙しく歩き回る。
 仕事をこなすトワは、眺めていても面白い。
 一生懸命になるあまりに、至極効率の悪いことを、頑張っていたりする。
 今も、片手で持てそうな空箱と空樽を、一つ一つ、丁寧に運んでいる。
『重ねて一度に運んだらどうだ?』
 精霊である我の声は、人間には届かない。
 ただし、サンタを信じ、妖精を信じ、動物と話す純粋なトワには、時折、何かが通じる。
「あ、中身無いから、まとめて運んで大丈夫だよね…」
 労力を惜しまない彼は、乗船して早々に海賊達から信頼を得た。
 やがて、何やら沢山買い込んだ様子のファジーが、姿を見せた。
「あ、ファジーさん、お手伝いしますよ」
「悪いねぇ。じゃあ、これ、運びこんでおいてくれるかい? アタイはもう一度買いに行ってくるからさ」
「わかりました」
 再び、トワ1人になる。
「いい天気だなあ…」
 任された仕事を終えたトワが、再び甲板に寝転んだ。

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