蒼い月の物語

□六
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私がこの世界とお別れするのも時間の問題になってきた。きっと…ううん必ずこの後別れはくる。笑っていままでごめんなさい。ありがとうっていう準備は出来ているから。




「…名無しさん。」



『ふぉう!?』




眉間をちょんとつつかれて思わず変な声が出てしまった。いかんいかん。




「どうしたんだ?さっきからずっとここに皺、寄ってるぞ?」





といってとんとんと自分の眉間をつつく蒼真。…最近こんなことばっかりだな私。




『ん…大丈夫だよ。少し緊張してるだけだから。』



「無茶はするなよ?」



『大丈夫だってば。』



少し体は震えているけれど笑って先へ進む。そしてゲートをくぐると有角ときのこ頭がいた。



『有角!』



そしてセリアが魔王復活の材料にされたところをみた。そしたらいきなりきのこが苦しみだして身体から悪魔の魂の集合体であるメナスが飛び出してきた。



『…気持ち悪い。』



姿かたちだけじゃなくて雰囲気も気持ち悪い。なんていうか…やっ、闇を感じる?あっ厨二くさいかな言ってること。




「名無しさん。無茶するなよ?」



『しろって言われてもしないから大丈夫。』




二人で顔を合わせてニコリと笑うと二手に分かれた。ゲームではないから敵も入れ歯も並行移動じゃないんだ。



『…っと、ここまでくれば…!』



少し(大分?)離れてうしろを見るとたくさんの入れ歯が迫ってきていた。もちろん奴らの狙いは私なわけで…。



『…っせいやぁ!』



思いっきり武器で攻撃すれば残り二体までに減らすことに成功した。あと二体と思ったら目の前にはメナスがいてまた走る羽目になった。



『敵多いっ!』



前から迫ってきて邪魔だった入れ歯は思いっきり蹴り飛ばして前に進む。もちろんメナスに攻撃を与えなければこれは終わらないわけだから少しずつメナスの弱点に攻撃を加えていく。




「名無しさん!」



『蒼真!こいつの弱点は露出したこの赤い顔みたいなのだからそれを攻撃して!』



「分かった!」




姿も見えないし声も聞こえづらい。でも確かに蒼真がこの場所にいることは分かったし、あとはここでしっかりと私のやるべきことをするだけだと思う。




『入れ歯はこっちっと!』



奴らを挑発してやればあっさりかかってくる。…やっぱり入れ歯って脳ないのか(当たり前だ。)メナスは蒼真に任せて私は入れ歯の駆除だけに集中する。




『ちょっと冗談じゃないみたいに多くない?…もしかしなくてもこれって私のせいだよね。ごめん蒼真。』




蒼真に謝りながら(聞こえてないと思うけど)確実に入れ歯を駆除していく。時には蹴り飛ばしたりもしながら。…こいつらの上で急降下キックするのって案外難しいね。



「大丈夫か!?」



『こっちは平気だから蒼真はそっちに集中して!』




目の前に集中しないとやられてしまうかもしれないこの状況で他人に構っていられるほど私は強くない。





「…っ!」





ザシュッと肉の切れる音と蒼真の声にならない叫びが聴こえた。蒼真に何があったのか知りたくて声を出そうとしたけれど…止まってしまった。蒼真は肩から血を流して立っていた。




『蒼真!』




彼に向かって瓶を投げる。中身はエクスポーション。ソウルついでにファイナルガードから取りまくったからいっぱいあるんだよね。




「さんきゅ、名無しさん。」



『大丈夫だから前向いて!無茶しちゃダメだよ!』




エクスポーションを使ったからといって完璧にキズが治るわけじゃない。ここに来てから勉強した知識だけど、ポーション類はただ単に瘡蓋と痛み止めの代わりになるだけで、決して治るわけじゃない。




「解ってる。」




蒼真はそういうと刀を抜いて走り出した。私は後方からの援護と周りの入れ歯の駆除に徹底する。
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