蒼い月の物語

□六
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いつまで続くのか分からなかった攻防も漸く終わりが見えてきた。片方の頭も壊れてあとは膝だけになったから。





「名無しさん!」



『解ってる!一気に片を付けるよ!』




蒼真は武器をかえて、私も後方から前衛にまわる。体の節々は痛むし、疲労で倒れてしまいそうになるけれど、頑張って意識を保ち続ける。




そして蒼真が武器を振り下ろすと膝の顔が壊れ、敵の動きが止まった。メナスの体が崩れていく。




「…っ!」




突然ガクリと膝を付いた蒼真。…助けなきゃ。そう思って走り寄った。




『蒼真…自分を保って。大丈夫。』




手をぎゅっと握りしめると蒼真はその手にすがるようにしがみついてきた。




「名無しさん…!」




私がぎゅっと蒼真を抱きしめると蒼真の体から黒い魂が飛び出してきた。ガクンッと崩れた体を支えると有角がこちらに来て、脱出をするといった。さよならが近いことが分かっているから蒼真から少し体を離そうとした。…蒼真に手を握られてそれはかなわなかったけれど。





「どうしたんだ?」






なんでもないよ。そう言いたかったけれど突然強風が吹く。それは中心部に向かって吹いていて、私だけを中へと引きずり込んでいく。





「名無しさん!」



『ダメ!手を離して!蒼真まで飲み込まれてしまう!』



「でもっ!」




私が言ってもなお食い下がる蒼真の手をゆっくりと外していく。




「やめろ…!」



『ごめんね…ありがとう。』





きっとここから出ないと帰れない。それでもいい。私が今、一番望むのはただ一つだから。…蒼真に幸せになってほしい。



「名無しさん!」



私の手を離さないようにつかんだ蒼真をドンと有角に向かって押す。突然のことによろけた蒼真は有角にもたれかかる。この距離ならば運ることは不可能。此方に手を伸ばす蒼真を必死で止める有角。ふわりと浮いた体。
…さようならみんな。





有角、私はいっつも迷惑をかけてばかりで何にも出来なかったね。でもそんな私を見捨てないでいてくれた有角は私の大切な仲間だよ。…


ヨーコさん、私のことを妹みたいに可愛がってくれてありがとう。時にはお姉さんみたいに、時にはお母さんみたいに接してくれたヨーコさんは私の心の支えでした。




ユリウスおじさん、瞬間移動したり動きが時々変だったけどそんなおじさんが大好きでした。おじさんは私のことを子供とかおおんなじように見てくれていたのかな…?




ミナちゃん、ごめんなさい。私はあなたの大切な人を横取りしました。でもやさしいあなたはきっとそんなことないよと言って私に笑顔を見せてくれるのかな?それだったらうれしいな。





そして…蒼真くん。異世界から来た私にも優しく接してくれてありがとう。本当に大好きです。私は元の世界でも絶対に貴男のことを忘れません。…本当にありがとう。そして迷惑をかけてごめんなさい。





いっぱい言いたいことはあるのに何も言えず、私は闇に飲まれていった。…何かの時のためにポケットに入れていた手紙を残して。








→あとがき
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