蒼い月の物語
□七
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バロールを倒し、先に進んでいく。あの時と同じ場所を進んでいるのに、隣に蒼真がいない。それだけで私はこんなにも不安になっている。…弱くなったなぁと思う。それじゃいけないのに。ため息をひとつ。
「名無しさんちゃん?」
パッと名前を呼ばれてそちらを見るとだいぶ距離が空いていた。私が前で、二人が後ろ。考え事をしながら歩くなんて…何時死んでもおかしくない。
『あ、はい、すいません…。』
どこか違和感を持ったような顔をしているヨーコさんに首を傾げるとなんでもないと言って笑った。…何かあったかな?
『何かあったら言ってくださいね。』
私にできることならしますから。そういうとありがとうと言ってほほ笑む二人。きっと今の私の笑顔はヒドク歪んでいるだろう。蒼真に会いたい。あって、話をして、抱きしめてほしい。そんな気持ちでいっぱいなのだから。
「ねぇユリウス?名無しさんちゃん…ずっと思い詰めた顔をしているの。やっぱり何か…あるのかしら?」
ヨーコがどこかぼんやりしながら先を行く少女の名前を小さく口にした。戦闘時には誰より早く動く彼女は今は切なげに目を伏せている。蒼真が相当心配らしくせかせかと歩いていくが一定以上距離をあけないように配慮している。
「そうだな…。」
悪魔城の中は入り組んでいて、広い。蒼真がいるであろう最上階までは遠い。
『蒼真…』
今どうなっているかもわからない男の為にここまでする女はそっとやさしく呟いた。
→あとがき