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□キャンディじゃ満足できないわ
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目に映るのは山の様に積みあがった書類。仕事が次から次へと溜まってゆく。因みにこの山の様に積みあがった書類は、俺の物では無い。俺の上司、クダリさんの物だ。
いつもいつも、筆記系の仕事はやらず直ぐにバトルに走り去って行ってしまう。俺はペンを握り締め、書類と顔を合わせる。
すると突然、部屋の扉が勢いよく開かれた。驚きに俺はペンを床に落としてしまい、書類から視線を離す。俺はそのまま扉の方に視線を向けた。
『クダリさん』
クダリさんはいつもと変わらない笑顔。いつも違うのは服。白のコートは何処にいったのやら、かわりに着ているのは白の魔女っ子衣装。
「ねっ!僕可愛い?」
と、尋ねてくるクダリさんに俺は可愛い可愛い、と軽く返した。するとクダリさんは、頬を膨らまし拗ねた態度をとる。
「可愛いなんて思ってないでしょ!!ぷんぷん!!」
ぷんぷん、て。クダリさん貴方は今おいくつですか。
俺はペンをデスクに置き、再び書類と顔を合わせる。そんな俺にクダリさんはぷんぷん怒って歩き寄り、デスクをバン、と叩いた。
『吃驚、!どうしたんですか?』
「Trick or treat!!」
あぁ。今日はハロウィンか
。すっかり忘れてしまっていた。そう言えばハロウィン企画をする、とノボリさんがブツブツ言っておられた。
俺はやっとクダリさんの魔女っ子衣装を理解し、溜め息をついた。頬を膨らませながらクダリさんは手を俺に突き付ける。
『お菓子なんて、キャンディーくらいしか無いですよ?』
そう言ってクダリさんの手のひらにミルク味のキャンディーを1つ置いた。クダリさんは眉間に皺を寄せ不満気にキャンディーを出し口の中に放り込む。
「Trick or treat!!」
『もう有りません、』
「じゃ、悪戯だ!」
最後のミルクキャンディーをあげてしまったので、残りのキャンディーはもう無い。クダリさんは笑いながら俺に近付いて来る。何をされるんだろうか、冷や汗が一気に吹き出てくる。
クダリさんの顔が目の前にある。
俺とクダリさんの顔の距離はわずか。俺は思わず目を瞑ってしまった。
「チューするね」
『っ!……ッ…』
重なる2つの唇。口の中にはさっきクダリさんにあげたミルクキャンディーの味が広がる。俺はクダリさんを離そうとするが頭を手でおされられてるため、動かない。
クダリさん力強っ。
『んーッ…!』
長々と
続くキス。息ができない。
と思った瞬間、唇が離れる。俺は軽く咳き込み、デスクの上に顔を伏せた。
クダリさんはご機嫌そうに鼻歌を歌ってデスクの上に座っている。
「名無しさん、大丈夫?」
『…クダリさん嫌い、マジ嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきr「ゴメンねっ!?」
少し焦り俺のわしゃわしゃと撫でる。俺は顔を上げクダリさんを見た。笑ってる。
俺の初めてのキスとったのに…。
クダリさんマジ小悪魔。
『クダリさん、』
「なに?」
『初めてだったんですけど…』
「なにが?」
『キス…』
キュレムに吹雪をやられた様な、冷たい空気が部屋を覆う。クダリさんは笑っているが、明らかに焦っている様だった。
「えっ、嘘!?名無しさんモテるから、いっぱいしてるのかと思ってた!」
『あの、すいません。泣いていいですか?』
とブツブツ呟いているところに、頭にネジが刺さっているノボリさんが現れた。一瞬、声を上げそうになったが口に出さす言葉を飲み込んだ。
「おや、クダリ此処におられたのですね」
「ノボリは仕事済んだの?」
「ええ、」
クダリさんも
仕事しろ。あぁ、書類はぐちゃぐちゃだし、疲れたし。家に帰りたい。
「あぁ、そう言えば。」
『…どうかしましたか?』
「名無しさんさん、Trick or treat」
聞きたくない言葉だった。
『ああ!!!用事思い出した!今すぐ行かないと!!』
俺はその場から逃げ出そうとした。ぐちゃぐちゃになっている書類を残し走ろうとした。だが、ノボリさんに腕を掴まれて逃げることが出来ない。
「どちらに行かれるのですか?」
『いえ、用事に…』
「今日は仕事以外、用事は入っていなかったのでは?」
「ノボリ、名無しさんが痛そうだよ」
痛い。この双子、二人揃って力が強い。
俺はノボリさんの方に向き直れば。そこにはクダリさんと全く変わらないノボリさんが居た。
『…ヒェェ!ノボリさんが笑ってる……!』
「お菓子をくださらないのなら、悪戯させてさせて下さいまし。」
「僕もしたい!!」
『助けてぇぇぇええ…!!!』
その夜、ギアステにいた鉄道員は俺の叫び声に背中を震わせていたとさ。
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