pkmn
□傷つけるほど好きだった
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今日は目覚めの悪い朝だった。身体にまとわりつく甘ったるい香水の香りが気持ち悪い。重たい頭を起こしリビングへと向かうが、インゴの姿は既に無かった。あるのは、インゴが作った朝食だけ。ボクは朝食を持ってソファーに場所を移す。
リビングから外を見た。
昨日からずっと雨が降り続いている。
「(…名無しさん)」
朝食を口に入れながら昨日の事を思い出す。雨の中、インゴと名無しさんが抱き合っていた。イライラが止まらなかった。何でインゴと一緒に居たの?いくらインゴでも流石に殺意が湧いた。
ボクはただ名無しさんに嫉妬してほしかっただけ。なのに何でインゴの胸なんか借りるの?
再びイライラが戻ってくる。
まだ残ってる朝食をキッチンに置き、いつものコートを羽織り家を出、ギアステーションへと向かう。
雨がボクの身体を打ち付ける。走れば直ぐにギアステーションに着く。ボクは名無しさんがいつも居る休憩所へ走った。ドアを勢い良く開ければ、予想道理、そこには名無しさんが居た。驚いている名無しさんを壁に押し付け無理矢理キスをした。
『エメ、ト、さん…っ』
苦しそうに息を吸おうとする、名無しさんに自然に笑みが溢れてしまう。
名無しさんは無理に自分からボクを離した。涙目になりボクを睨み付けてくる。
『何、するんですか…』
ボクが雨の中を走ったせいか、キスをした時に名無しさんが少し濡れた。
名無しさんはその場に座り込み、口を制服の袖で拭く。
「ボクの事、キライ?」
『…それはこちらの台詞です』
「ボクは名無しさんの事、大好きだよ」
と、言った瞬間、名無しさんは唇を噛みこの場から去ろうとした。ボクは名無しさんの腕を掴み止める。
「名無しさんはインゴの方が好きなの?」
『優しいですしね、1人だけを愛してくれそうですよ…』
「ユルサナイ、」
『離して下さい、仕事場に戻らなければならないので』
「名無しさんはインゴに渡さない」
『…』
名無しさんは無言のまま休憩所から立ち去っていった。ボクは帽子を被り直し、執務室へ向かう。インゴが居る執務室。ドアを開ければインゴが睨み付けるように見てくる。そして腕の時計を見た。
「30分遅刻です。何をしていたのです、お前は」
「名無しさんに会いに行ってた」
するとインゴは目の色を変え睨み付けてきた。
「また、傷をつけに行ったのですか?」
「…」
「これ以上、あの方に傷をつけるは許しません」
「ボクもインゴをユルサナイよ」
「……、許さない、とは?」
インゴの瞳がいつも以上に殺気に満ちていた。人に向ける目じゃない。
「ボクのものに手を出さないで」
と、言った瞬間インゴがデスクを叩き静かに怒鳴った。
「一体、お前のものは幾つあるんですか…!!」
「幾つあるかはインゴには関係ナイ」
「お前がワタクシの片割れだと思うと、反吐が出ますよ…」
インゴは立ち上がり、そう吐き捨てると執務室から出ていった。
あんなに怒ったインゴは久々に見た。でもインゴが怒ったとこで名無しさんは絶対に渡さない。
名無しさんはボクだけのものだから。
(大好き、大好き大好き)
(だから嫉妬して)
(もっとボクを求めて)
(傷つけるほど好きだった)
―――――
中途半端な終わり方ですいません。
結局、▽→主←▲
お題は秋桜様からお借りしました。