雨漏り食堂

□優兄貴
1ページ/4ページ



佐東たちに、肆亜との関係を聞かれ、仕方なく教えた後、まわりの男子にひやかされた。

雨深は、少し照れくさそうにしながら、居心地が悪そうだった。

その後の授業は、クラスメートは何故か浮き足立っていた。

授業がすべて終わると、肆亜は帰る用意をしていた。

筆箱やファイルを鞄に入れてチャックを閉める。

鞄を肩にかけて、教室を出た。

騒がしい廊下をひとり歩いていると、後ろから走る足音が肆亜を追いかけてきた。

そして、肆亜はぐっと腕を掴まれた。


「肆亜!」

「あ…栢山くん」


追いかけてきたのは、雨深だった。


「…一緒に帰んねぇ?」

「…ごめんなさい…バイトがあるんです」

「あの食堂?」

「はい………一緒に来てくれますか?」


少し遠慮がちに聞いた肆亜は、しばらく返事のない雨深に顔をうつむかせた。


「ご、ごめんなさい…嘘で…」


“嘘です”という言葉は雨深によって遮られた。


「行く」

「え…」

「最初驚いたけど…行っていいんだろ?」

「…はい……」

「じゃあ、決まりな。行くぞ」


雨深は右手で肆亜の左手を握り、引っ張った。

二人の手は、熱くなっていた。

肆亜の頬は朱く染まり、雨深はちらりと見える耳が朱くなっていた。

雨深と肆亜の歩幅には、差がある。

たが、雨深はさり気なく肆亜に歩幅を合わせていた。

そのために、肆亜は歩くのが不思議と辛くなく、自然に歩けたのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ