雨漏り食堂
□優兄貴
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佐東たちに、肆亜との関係を聞かれ、仕方なく教えた後、まわりの男子にひやかされた。
雨深は、少し照れくさそうにしながら、居心地が悪そうだった。
その後の授業は、クラスメートは何故か浮き足立っていた。
授業がすべて終わると、肆亜は帰る用意をしていた。
筆箱やファイルを鞄に入れてチャックを閉める。
鞄を肩にかけて、教室を出た。
騒がしい廊下をひとり歩いていると、後ろから走る足音が肆亜を追いかけてきた。
そして、肆亜はぐっと腕を掴まれた。
「肆亜!」
「あ…栢山くん」
追いかけてきたのは、雨深だった。
「…一緒に帰んねぇ?」
「…ごめんなさい…バイトがあるんです」
「あの食堂?」
「はい………一緒に来てくれますか?」
少し遠慮がちに聞いた肆亜は、しばらく返事のない雨深に顔をうつむかせた。
「ご、ごめんなさい…嘘で…」
“嘘です”という言葉は雨深によって遮られた。
「行く」
「え…」
「最初驚いたけど…行っていいんだろ?」
「…はい……」
「じゃあ、決まりな。行くぞ」
雨深は右手で肆亜の左手を握り、引っ張った。
二人の手は、熱くなっていた。
肆亜の頬は朱く染まり、雨深はちらりと見える耳が朱くなっていた。
雨深と肆亜の歩幅には、差がある。
たが、雨深はさり気なく肆亜に歩幅を合わせていた。
そのために、肆亜は歩くのが不思議と辛くなく、自然に歩けたのだった。