雨漏り食堂

□毒吐く独白
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私は、花山 礼為。

高校の入学式で、初めて一目惚れというものをした。

その人は、入学初日から、友達が多くて、笑うととても可愛い顔になる。

だけど、真面目な顔は、かっこよくて、私は彼――雨深くんの虜(とりこ)になってしまった。

高校2年生になって彼に、彼女ができた、らしい。

その彼女というのが、美原 肆亜という地味で白黒をイメージさせる女だった。

私は、悔しくなった。

だけど、彼が選んだのなら…と諦めかけていた、ある日のことだ。

なんとなく、街を歩いていた。
こんな告白もしていないのに、失恋するなんて、情けない。
そう思いだすと、とまらなくなるので、私は気を紛らわせたかった。

すると、いきなり肩を叩かれた。

振り向くと、そこには胡散臭い笑みを浮かべた私と同年代くらいの男がいた。

ナンパかと思って、前をむき直そうとした。


「ねぇ、君…その恋、諦めちゃっていいの?」

「は……」


なんで、
なんで、知っているの?

思わず、振り向いて、そいつを見た。

やはり、胡散臭い笑みを浮かべている。


「肆亜、だっけ…そいつさえいなければ、君の恋は叶うかもしれないのにね」

「な、なんで…」

「僕も、同じだよ」

「は…?」

「いや、こっちの話」


そして、そいつは笑みを浮かべ、言い放った。


「ねぇ、力を貸すから、力を貸して」

「どういう意味よ」

「僕も肆亜が嫌いなんだ…だから、君は肆亜を殺さない程度に苦しめて、痛めつけてよ」

「でも…そんなことしたら…」

「大丈夫だよ、“彼女”は死なない」


私は、その誘いに頷いてしまった。

ある日、私は美原を屋上に呼んで、暴行を加えた。

私の予想と反して、彼女は助けを呼んだり、許しをこうことはしなかった。

そして、そんなことをしても倒れない美原を精神的に追いつめようとしたが、やはり彼女は倒れなかった。

むしろ、まるで別人のように私に言うだけ言って、気を失った。

…やはり、彼女にはかなわない。

彼女と雨深くんが、少しギクシャクしていた時も、何故かチャンスというよりも、彼らには、もとの距離に戻って欲しいと、思ってしまっていた。

心のどこかでは、実は2人を応援していた。

雨深くんのことは、好きだけど、美原のことも…

実は、嫌いじゃない気がする。

私は、きっと、美原のことを好きになった雨深くんが、好きなんだ。

だから、2人には離れてほしくない。
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