銀色の時間。

□絆される
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「阿伏兎、なにそれ?」
「荷物」
「ふうん。ま、俺に迷惑掛けないでね」

ひらひらと手を振って乗艦する神威に、阿伏兎はやれやれと溜息をつく。

「つーわけだから、あの人には迷惑掛けないように」
「わかりました。でも、荷物になったつもりはありませんから」

冷たく言い放った少女に、阿伏兎はやれやれと顎をさすった。
少女の名前は神武遼。
地球産の夜兎だ。
正しくは、何世代も前に夜兎の血が混じった地球人らしい。
本人曰く「先祖返り」した状態で、夜兎としての能力を多少は備えているという事だった。
あくまでも「多少」だ。
肌は白いが日光に著しく弱いという事もないし、戦闘能力も地球人にしては、という程度。
そんな遼を阿伏兎が拾ってきたのには理由がある。
抜群に頭が切れるのだ。
会計から宇宙船の操縦まで何でも御座れの遼の能力は、神威を団長に据えた第七師団にとって、非常に魅力的だった。

「副団長、先ずは操縦室を案内して頂けますか」
「はいはい。つったく、アンタも人使いが荒いのかよ」

ぼやきながら、阿伏兎は遼を案内し、団員達に簡単に紹介する。
女の、それも純粋な夜兎ではないという事で、最初は団員達も受け入れ難く思っていたようだが、十日もすると、その才覚に文句を言う者は居なくなった。

「副団長、団長はどちらですか?」
「さあな」
「では、こちらの資料に決裁をお願いします。私は団長を探して来ますので」

阿伏兎にデータを渡すと、遼は操縦室を出て神威の部屋に向かう。

「団長、いらっしゃいますか?」

声を掛けるが反応が無いので、遼は溜息をひとつついて扉を開けた。

「失礼します。やっぱりいらっしゃいましたね」
「あれ?ロックしてたと思うけど」
「この艦のセキュリティが、私に外せないわけないじゃないですか」
「こういうの、プライバシーの侵害って言わない?」
「言いませんね。そんな事より、仕事して下さい」

あっさり切り捨てる遼に、神威は「そんなのは阿伏兎にさせればいいよ」と笑う。

「副団長には既にして頂いています」
「んー、俺バカ団長だから出来ないよ」
「大丈夫です。バカでもアホでもマヌケでもトンマでもマダオでも理解できるようにご説明しますから」
「じゃあさ、俺をその気に出来たら仕事に専念するよ」

神威の発言に、遼は眉を寄せて首を傾げた。

「男をその気にさせるなんて、一つしか無いだろ?」
「仰っている意味がわかりません」

冷たく言い放った遼に、神威は「意外とウブだったんだな」と笑う。

「……そういう行為をお望みなら、専門の方をお呼びしますよ」
「そんなの待ってられないよ」

手首を引かれ、気が付いたらベッドに仰向けにされていた。

「私は、団長の性処理まで承ったつもりはありませんが」
「俺に仕事をさせたいんだろ?」
「……口で構いませんか」

諦めた遼は、盛大な溜息とともにそう尋ねる。

「んー、そうだな。満足出来たらそれで終わりでいいよ」
「では、失礼します」

ベッドから起き上がると、遼は神威に端に座るよう促し、上着を脱いで髪を緩く纏めた。

「なーんか、臨戦体勢って感じ?」

どこか嬉しそうな神威をよそに、遼は神威のズボンの前を寛げると、それを取り出し先端に口吻る。

「ん、ちゅっ、んんっ」

まだ起ち上がっていないそれに舌を這わし、丁寧に舐め取っていく姿に、神威は疑問をぶつけた。

「なぁーんか、随分慣れてるけど、もしかしていつも阿伏兎にしてるとか?」
「んっ、はあっ……まさか、あの人はただの上司ですよ」
「そっか。じゃあ、第七師団では俺が初めてってとこかな?」
「んっ、ちゅっ、第七師団も何も、人生初めてですよ」

そう答えて、神威のモノを咥えた遼は、苦しそうに顔を歪める。
瞬間、神威は自分の背中がゾクリと震えるのを感じた。
興奮と快感が襲ってくる。

「ちゃんと手も使ってよ」
「?」

神威の膝の辺りに置かれていた遼の手を、神威はゆっくりと自分の袋の部分へ誘った。
遼が遠慮がちにやわやわとそこを揉むと、神威は堪らず息を漏らす。

「ふっ、は、上手上手。その調子で竿もしっかり舐めて」
「んっ、じゅるっ、ふぅっ」

口の中で質量を増してくるそれに、遼は自分の体が熱を帯びていくのを感じてぶるりと震えた。
頭の奥で冷静な自分が侮蔑している。
行為に及ぶ自分の姿を、求める神威を。

「そうそう。じゃあ、奥まで咥えて」

指示に従い咥えると、後頭部を押さえられ、喉の奥まで挿入された。
苦しさに嘔吐くが、神威は力を緩めない。

「んぐっ、うっ」
「ははっ、いい眺めだね」

涙を浮かべて苦しむ遼の姿に、神威はますます興奮していく自身を感じ、笑みを浮かべた。
押さえていた手を離すと、遼は慌てて口を外して数度咳き込む。
荒い息を繰り返す遼に、神威は「残念だったね」と笑う。

「イけなかったから、セックスしようか」
「……」

悔しそうに唇を噛む遼をよそに、神威は服を脱いで裸になると「早くしなよ」と促した。
遼は震える指先でシャツを脱ぎ、下着姿になる。

「全部脱いだら?
今更恥ずかしいなんてないでしょ。それとも、俺に脱がして欲しいの?」

意地悪く告げる神威に、遼は覚悟を決めて下着を外すと、ベッドの端に座った。

「もしかして、こっちも初めて?」
「いえ……」
「ふうん。じゃあ、ちょっとくらい雑に扱っても壊れないね」

押し倒され、いささか乱暴に胸を揉まれて遼は顔をしかめる。
先端をギュッと抓まれると、腹の奥が疼き、下半身が熱をもっていくのがわかった。

「ここは自分で弄ってなよ。俺はこっちで遊ぶから」

濡れ始めた蜜口を撫でられ、思わず腰を浮かす。
まるで触れて欲しいと言わんばかりの反応に、神威はまだ剥けていない花芯を擦りあげた。
くぐもった声をあげて膝を閉じようとする遼に、神威は「ダメだよ」と笑って割り開く。 

「っは、や、待って」
「こんなに濡れてるのに?」

神威が軽く指を押し入れて動かすと、くちゅくちゅと卑猥な音が響いて、遼の感覚を犯していった。

「これなら、無理矢理押し込めば入るかな?」

指を引き抜くと、軽く自身を扱いて挿入する。
瞬間、爪先まで痺れるような痛みが走り、逃げだそうと動くが、神威に腰をがっちり掴まれていて、それは奥まで進んできた。

「締まりはいいけど、あんまり濡れてないからイマイチだな〜」
「なんっ、勝手な、こと、いわなっ……ひうっ!」

花芯を濃やかに擦りあげられ、遼は容赦なく与えられる快感に唇を噛んで耐える。

「さぼってないで、胸はちゃんと自分で弄りなよ。じゃないと、通信オンにして、艦内に声聞かせちゃうよ」
「なっ!」

とんでもない事を言い出した神威に、遼は渋々胸に手をあて軽く揉んだ。

「そんなんじゃ感じないだろ?
もっとしっかり……わかるよな?」

神威に促され、遼はやや強めに乳房を揉みあげ、すっかり起ちきった先端をこりこりと弄る。

「んっ、ふっ……っあ」
「そうそう、上手上手。こっちも動かしてあげる」
「やっ、あぁっ、ん、やぁっ」

ずりずりと中を擦られて、遼は思わず嬌声をあげた。
余程神威と体の相性が良いのか、奥を突かれる度に痺れが走り、声をあげてしまいそうになる。

「あっ、ダメっ、やだぁっ」
「はぁ、っ、あ、ダメじゃないだろ。こんなに締め付けて」

互いに余裕が無くなり、荒い呼吸を繰り返す。
響く水音がやたらと耳につき、二人を絶頂へと導いていく。

「そろそろ、かな」

ぎりぎりまで引き抜いた神威は、ゆるゆると蜜口を刺激した後、一気に奥まで貫いた。

「イ、くっ、んうぅぅっ!」

体を仰け反らせ、軽く痙攣した遼に、神威は満足げに笑うと「次は俺の番だね」と、腰の動きを速くする。

「ま、やだ、今イったばっかり……んんっ!」
「は、っあ、ほら、もっと締めてよ」

花芯をギュッと抓むと、遼は神威のものを食い千切らんばかりに締め上げた。

「……っ!」

堪らず神威は自身を抜き取り、遼の腹の上に精を吐き出す。
神威はそれを指で掬うと、まだ荒い呼吸を繰り返す遼の唇に擦り付けた。

「何、するんですか」
「最後は舐めて綺麗にするものだろ?」

笑う神威に、遼は声に出さず「死ね」と答えると、体を起こして投げ捨てられていた神威の上着で自分の顔と腹に付けられた物を拭い取る。

「それ、俺のなんだけど」
「だから使ったんですよ」

冷たく言い放つと、服を着て髪を束ねなおした。

「バカ団長、約束通り仕事してくださいね」
「しょうがないなぁ」

にこにこと満足そうな神威に舌打ちすると、遼は部屋を出る。
溜まっている仕事があるが、今日はもうそんな気になれない。
諦めて、阿伏兎に通信を繋ぐ。

「副団長、神武です」
『どうした?』
「団長は見つかりました。急ぎの仕事はもう有りませんので、一旦休憩させて頂きます」
『……わかった。まあ、ゆっくりしてこい』
「ありがとうございます」

妙に含みのある表現に首を傾げつつ、遼は通信を切り、自室へ向かった。
シャワーを浴び、一休みして仕事に戻った遼が怒り狂うのは、また別の話。
 

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