銀色の人。

□【何で横文字の名前?】
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「エリザベスだ」

何故か自信満々に胸を反らせる桂に、遼は困惑した表情で首を傾げる。

「ね、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。して、どうした?」
「それ…てか、エリザベスって、何?」
「我等が同朋だ」

「聞きたかったのはそういう事じゃない」そう思いながら、遼は「そっか」と苦笑する。
して、何故真選組の遼と攘夷志士の桂が顔を付き合わせているかと言うと、話は二時間ばかり前に遡る。




















晴れやかな朝を迎えた真選組屯所では、天気とは正反対の面持ちで主だった隊士達が集合していた。

「…と、いうわけだ」
「いやいや。局長、アンタまだ何にも話してないですから。文章の世界だからって楽しようとしないで下さい」
「何だよ。『3年Z組銀八先生』のノベルスでは、話進む時こんな感じだったろ?」
「わーっ!そういう事言っちゃ駄目ですって!!」

暴走する近藤の口を塞ぐべく、隊士達は慌てて大声でわめき立てる。

「冗談!冗談ですよねっ!?」
「この作品は集英社並びに作者とは一切関係ありませんからっ!」

フォローする隊士達をよそに、遼は自分の膝を枕にして眠りはじめた沖田を起こそうと必死だ。

「沖田さん、会議始まってますよ。こんな所で寝ないで下さいよ」
「いい枕があるのに、寝ないわけにはいかねぇだろぃ」
「バカな事言ってないで、ホラ、みんな見てますから」

揺すったり鼻をつまんだりしてみるが、どこ吹く風で本格的に寝始める。

「沖田さーん!」
「何やってんだオメェらは」
「あ痛っ」

バシッ、バシッと土方にツッこまれ、遼は後頭部を、沖田は額をおさえた。

「バカな事してねぇで話を聞け」
「ひどい。私はちゃんと聞いてたのに……」
「バカに関わってたんだから同罪だ」
「バカバカバカバカ、土方さん馬にでもなったんですかィ?」
「総悟ォォ!表に出やがれェェ!!」

隊士にはお馴染みのやり取りが始まり、今日も朝礼が長引くぞと皆が覚悟を決める。

「というわけで、今日は皆で攘夷浪士を探す!」

どさくさに紛れてそう叫んだ近藤に、方々から「えーっ」とか「面倒くさい」等の不満が上がるが、「探すったら探すの!」という一言で、各々見廻りに出て行った。

「いやそもそも攘夷浪士探すのが仕事なんじゃ……」
「何でィ神武、近藤さんの話聞いてなかったのか?」
「え?」
「今回探すのはコイツ、指名手配中の攘夷浪士、桂小太郎だ」

沖田が広げた手配書には、遼がよく見知った男の顔と「この顔にピンときたら110番」の文字。

「アンタも真選組なら、指名手配犯くらい覚えとくんだな。桂は穏健派で名が通ってるが、平たく言えば爆弾魔のテロリストでい」
「へ、へ〜、爆弾魔かぁ〜。会わないように気を付けますね」
「いやいや、会って捕まえろって言ってんだよ」

沖田に手配書を渡され、遼は硬直する。
どうしたものかと手配書と睨めっこをしていると、桂の顔に煙草が押し付けられた。

「コイツには散々煮え湯を飲まされてんだ。どうやらかぶき町付近に潜伏してるらしいからな、今日こそしょっ引いて洗いざらい吐かせてやる」
「かっ、かぶき町に居るんですか?」

驚く遼をどう解釈したのか、土方は眉間のしわを一層深くする。

「テメェも隊士のつもりなら、爆弾魔の一人や二人捕縛してこい」
「そんな無茶苦茶な」
「出来ねぇなら、荷物纏めて実家に帰るんだな」

新人の、それも見習い期間中の任務としてはハード過ぎるのではないか。と、反論したい気持ちをグッと抑え、遼は「頑張ります」と、返事をした。

「見廻りに行くぞ」
「え、副長とですか?」
「……お前、自分が俺の補佐見習いだって忘れてないか?」
「ちょっとだけ、忘れてました」

素直に答える遼に、沖田は堪らず吹き出す。

「今日はアンタと見廻りすんのが面白そうだ。というわけで、土方車持って来いよ」
「おう。って、何で俺が運転手しなくちゃなんねーんだ!!」

いがみ始めた二人の傍らで、遼は一人頭を抱えた。
桂に会うのは非常にマズい。
真選組に入隊した事を知らない桂が、どんな爆弾を仕掛けてくるかわからない。
爆弾魔だけに。

「おい、ボーッとしてねぇで行くぞ」

いつの間にかパトカーに乗っていた土方に呼ばれ、遼も慌てて乗り込む。
こうして土方、沖田、遼と山崎の見廻りが始まった。

「あ。結局運転手は山崎さんなんですね」
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