銀色の人。

□【囮捜査って禁止されてるよね】
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「連続殺傷事件?」
「そうでさぁ。それも、カップルばかり」

呆れた様子で肩をすくめる総悟に、遼は首を傾げる。

「でもそれ、真選組(ウチ)の管轄じゃないですよね」

真選組はいわゆる対テロ部隊である。一般的な「事件」の取扱は大江戸警察が行う筈だ。

「そうなんですけどねぃ…」
「とっつぁんの命令なんだよ」
「それって…私たち暇だと思われてるんですかね?」

顔をひきつらせる遼に、沖田と土方は無言で応える。

「今抱えてる仕事があるんで、私はこれで…」

直感的に逃げた方が良いと感じた遼は、作り笑顔全開で後ずさりするが、ガシッとその肩を掴まれた。

「久々に書類整理以外の仕事だぁ。嬉しいだろ?」

土方の笑みに、遼は全てを諦めた。











【囮捜査って禁止されてるよね?】













「と、言うわけなの」

万事屋のソファに座った遼は、溜め息を混じりに顛末を語った。

「で、俺らにどうしろってんだよ?」

だるそうに答える銀時に、遼も面倒くさそうに話の続きを口にする。

「囮捜査をする事になったんだけどね、カップル役をするのに人が足りないの。だから、万事屋にって」
「何だソレ?」
「最初はね、私と誰かが組んでって話だったんだけど……い、色々あって」

若干目をそらして言う遼に、銀時達は首を傾げる。

「それでねっ!」

詮索されるのが嫌な遼は、怒鳴るようにして話を変えた。

「私の恋人になってほしいの!」
「は?」
「え?」
「遼〜言い回し間違えてるアル」

酢昆布をかじりながら、神楽は冷静につっこむ。

「へ?あ、そうか。恋人役ね。役」
「念押されると凹むんですけど…」

ぼそりと愚痴った銀時にも気付かず、遼は「お願いできるかな」と不安げに銀時を見上げる。

「そりゃあ、まぁ…やってやんねー事もねぇけど」

もったいぶった言い方をする銀時に、遼は「報酬はちゃんと払うよ!」と、微笑む。

「そーゆー問題じゃねぇし」
「ちょっともー拗ねないでくださいよ銀さん。どうせ、断る気なんてないんでしょう?」

呆れた、と肩をすくめる新八に、銀時は唇を尖らせて「そうだけど〜」と遼から顔を背ける。

「そんな顔してもキモイだけですから。と言うわけで遼さん、依頼は受けますから」

にこり。と笑った新八に、遼はほっと胸を撫でおろす。

「ありがとう。新八くん」
「いいえ。どうせ銀さんの仕事になりますから」
「え?」

きょとんとした顔で瞬きを繰り返す遼に、新八は当然と言った顔で「ちゃんと仕事してくださいよ」と、銀時をせっつく。

「しゃーねぇなぁ。ま、やって…」
「ちょっと待って!」

話を進める銀時達を、遼は慌てて制止する。

「この件は、新八くんにお願いしたいの!」
「は?」
「え?」
「マジアルか!?」

三人の驚き様に「何か見た事ある光景だな」と思いながらも、遼ははっきりと頷く。

「なっなななっ、何で僕が!?」
「いや、かな?」
「そんな!滅相もない!」

ぶんぶんと首を横に振る新八に、遼は「良かった」と微笑む。

「ちょいまち!」
「何、銀ちゃん?」

折角話がまとまりかけていたというのに、銀時は身を乗り出すようにして話を遮った。

「何で新八なわけ?」
「だって銀ちゃんと私が一緒に歩いてても、兄妹にしか見えないもん。それじゃあ囮の意味ないし」
「そんな事ねぇって。俺と遼が一緒に歩いてみ?
お前アレだぞ。ベストカップル的なアレだぞ」

しどろもどろになりながら訴える銀時に、新八と神楽は白い目を向ける。

「銀ちゃ〜ん、往生際が悪いアルよ」
「当たり前だ!
新八なんかに遼をやってたまるか!」
「何か娘を彼氏に取られた父親みたいアル」

呆れた神楽は溜め息と共に茶をすする。

「新八は彼氏じゃありませんー。ただの眼鏡ですー」
「僕の存在価値それだけですかっ!
…て言うか銀さん、子供みたいな事言わないで下さいよ。遼さんが困ってるじゃないですか」

見かねた新八が溜め息と混じりにそう告げると、銀時はちらりと遼の方を見て肩を落とした。

「わかったよ!わかりました!!」
「やっと諦めたアルか。本当、しつこい男だな」
「お前っ、標準語で言うんじゃねーよっ!より傷つくじゃねぇか!」

渋々納得した銀時に、新八はやれやれと肩をすくめる。

「じゃあ遼さん、依頼の詳しい内容をお願いします」
「あ。うん。あのね……」






かくして万事屋の面々(主に新八)は、カップル連続殺傷事件の囮捜査に協力する事となったのである。



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