銀色の人。

□【万事屋銀ちゃん】
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「銀さん…何ふて腐れてるんですか?」
「別にぃぃっ」

ソファに寝転がり、つまらなそうにジャンプをめくる銀時に、新八は短い溜息を吐いた。

「それにしても…遼さんは何でこんな時間に外出してたんですかね?」

遼と神楽が風呂に行ってから、銀時から事の顛末を聞いていた新八は疑問を口にした。
銀時の知り合いらしいからと、新八も神楽も特に不審を抱いていなかったが、考えてみると遼は謎だらけである。
わかっているのは名前と簡単な職歴だけ。

「そう言えば、遼さんって幾つなんですか?」
「んあ?
っと、確か……十八だな」
「え?てっきり姉上より年上かと……」
「そりゃあ、オメェんとこの姉ちゃんとは色気が違うだろーが。間違いなくEはある…」

言いかけて、銀時は突然ぶるりと震え上がった。
すなっくすまいるの方角から、なにやらどす黒い念波を感じる。

「きっ、聞こえたのか?!」
「姉上のコンプレックスですからね…じゃなくて、銀さんが遼さんと会うのはいつ以来なんですか?」
「……十年振りだな」

指折り数えた銀時は、少しだけ眉間にシワを寄せた。
思ったよりも、時間が過ぎるのは早かったらしい。

「色々分からない事はありますけど、僕は遼さんが悪い人には見えないので、協力しますよ」
「何だ、遼に惚れたのか?」
「ぎっ、銀さんには関係ないですよ!」

真っ赤になって声を上げる新八に、銀時はにやりと人の悪い笑みを浮かべる。

「新八く〜ん。青春だねぇ。お通ちゃん親衛隊はどうするのかなぁ?」
「うっ…」
「冗談だよ。そーゆーのとは、違うだろ?」
「…本当、性格悪いですよね」

下衆っぽい笑みを浮かべる銀時に、新八は何とも言えぬ顔で肩をすくめた。

「それにしても、二人とも長湯ですね」

ちらりと時計を見ると、二人が風呂に行ってから一時間ばかり経っている。

「女なんざそんなもんだよ。特にヤる前なんか…」
「うわっ、変態」
「本当、どうしようもないアル」
「ぎえっ、神楽!?」

気配もなく現れた神楽に、銀時は飛び上がらんばかりに驚く。

「もうすぐ遼も来るアル。聞かれてたら最後ネ」
「聞かれてたら良かったのに」

二人に軽蔑の眼差しを向けられ、銀時は視線をさ迷わせた。

「お風呂アリガトー…って、何か有ったの?」
「何でもねーよ。つか、次俺入ってくらぁ」

銀時はすれ違いざま遼の額をペチンと叩くいて「髪乾かせよ〜」と言い残して去っていく。

「??」
「遼さん、気にしないで下さい。大した事じゃありませんから」
「そうネ。ただの下ネタアル。つーかあのヤロウ、遼に手ぇあげやがって。ちょっとシメてやるアル」
「おでこ叩かれただけだよ?」

「手をあげた」は大袈裟だと首を傾げる遼を置き去りに、神楽は風呂場にスッ飛んでいく。

「行っちゃった…」

呆気に取られている遼に、新八は「気にしないで下さい」とへらっと笑う。

「あ、そうだ。新八くんに聞きたい事があったの」
「僕に?」
「うん。銀ちゃんや神楽ちゃんだと、偏っちゃいそうだから…」

苦笑する遼に新八が首を傾げると、遼は「真選組の事だから」と肩をすくめる。

「僕も特別良い感情が有るわけでは無いんで何とも言えないんですが…局長さん…近藤勲って言うんですけど、あの人は僕の姉上のストーカーです」
「は?」
「で、副長の土方十四郎さんは瞳孔開いたマヨラー。一番隊隊長の沖田総悟さんはドSです」
「えーっと…何でそんなにキャラが濃いの?」
「聞く所ソコですか?!
まぁ、悪い人達じゃないんで、安心してください」

フォローだかなんだかわからない事を言った新八は、へらっと気の抜けたような笑顔になる。
つられて遼もくすりと笑った。

「何キタネーもん見せてくれてんだこのマダオがぁぁっ!」
「ギャァァッッ!」

神楽の怒声に次いで聞こえた銀時の悲鳴に、遼と新八は驚いて風呂場の方へ目を向ける。

「今の…」
「僕ちょっと見てきます」

すくっと立ち上がった新八は、足速に風呂場へと向かっていく。
































「ホントマジで、どんだけ理不尽な仕打ちなんだよ」

倍以上に腫れた頬に氷嚢を当てながら、銀時は神楽を睨めつける。

「うら若き乙女にあんなもん見せたんだから当然ネ」
「テメーが勝手に見たんだろーが!つーかセクハラだぞ!風呂覗きやがって!!」
「それより遼、私がいない間にダメ眼鏡に変な事されたり、思春期特有のいやらしい目で見られたりしなかったアルか?」
「まさか。ずっと、話し相手してくれてたんだよ」



………
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