銀色の人。

□【幕府特別武装警察真選組】
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「テメェ、俺相手に手加減するつもりだったのか?」

苛立つ土方に、遼は当然だと言わんばかりに頷く。

「だって、手加減しないと死んじゃいますよ」
「はっ、上等だ!」
(ヤバイ!何かスイッチ入っちゃった!)

悪化した状況に、遼はオロオロとした様子で上座の近藤を見やる。
遼の視線に気付いた近藤は、心得たというように瞬きをした。

「トシ、少し冷静になれ。勝負は剣道の公式ルールに則った一本勝負。先に相手の面・胴・小手のいずれかに打ち込んだ方の勝ちとする。判定は俺が行う。二人とも、良いな?」
「ちっ、仕方ねぇ」
「わかりました。あの、有難うございます」

頭を下げた遼に、近藤は表情を緩ませて「怪我しない程度に頑張れ」と優しく声をかける。
遼は赤くなる顔に手を当てながら、にこりと笑い返した。
そして、土方と相対する。

「お願いします」
「すぐに終わらせてやらァ」

構えた二人を見計らい、近藤が道場を震わせるような凛とした声で合図をかけた。

「始めっ!!」
「行きます!」

先に動いたのは遼。
下段から土方の胴を狙うが、土方の竹刀はしっかりとそれを受け止めた。

「良い腕だ。テメェの流派は?」
「ととさ…師は、北斗一刀流の免許皆伝でしたが、私のはそれを基本にした我流です!」

受け止められた一刀を弾き返し、遼は後方に飛び退く。

「我流か…成る程、なっ!」

今度は土方が面を狙って真っ直ぐに打ち込むが、遼はそれをあっさりかわして土方の小手に竹刀を振り降ろす。

「甘ぇよ!」

予測していた土方は、素早く竹刀から狙われた左手を引いて、再び遼の面目指して竹刀を振り降ろした。
遼はそれを寸手の所でかわし、後ろに飛び退く。

「流石は鬼の副長。一筋縄ではいきませんね」
「たりめーだ。ガキに負けてたまるか。降参するなら今のうちだぞ」
「そうですね……今だったら、許してもらえます?」
「そうだな……屯所の雑巾がけくらいで勘弁してやるよ」

ニヤリと笑った土方に、遼は「悩みますね」と、暢気に返すが、2人の間にはピリピリとした空気が漂っている。

「とりあえずは、保留でお願いします」

床を蹴った遼は、下段から構え土方に突っ込む。
掬い上げた竹刀は当然受け止められ、鍔迫り合いの状態になる。
ミシミシと、競り合う竹刀の音に、遼の気が一瞬緩み、膝を折った所に土方は思わず足払いをかけた。
思わぬ攻撃に、遼は「あっ……!」と短く悲鳴をあげ、傾いた体に土方は勿論、周囲も土方の勝利を確信する。

「なーんちゃって」

瞬時に体勢を変えた遼は、ぴょんっと後ろに下がると、土方目がけて竹刀をブン投げた。

「なっ!?」

真っ直ぐに向かってくる竹刀に驚いた土方は、慌ててそれを叩き落とすが、その一瞬、遼を見失う。

「甘いのはあなたの方です」

背後から聞こえた声に振り返ると、叩き落とした筈の竹刀を持った遼が不敵に笑っていた。

「!?」
「胴!」

避ける間もなく、遼の竹刀は土方の腹部に当たる。
土方に衝撃は全くなく、竹刀は本当に「当たった」だけで、理解が現実に着いていっていない道場には沈黙が落ちる。
一早く状況に気付いた総悟が、近藤の肩を叩き「判定は?」と尋ねた。

「い…一本!勝者、神武遼!!」

近藤の声に、水を打ったように静まりかえっていた道場に歓声が上がる。

「スゲェ!副長に勝っちまった!」
「マジかよ!」
「つか副長が負けるなんて…」
「土方コノヤロー、負けた感想は?」

ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら、総悟が立ち尽くす土方に近付く。

「鬼の副長が女に負けたとあっちゃあ、武士の名折れですゼィ。介錯なら俺がしてやらァ」

そう言って沖田は刀を抜き、実に楽しそうに土方の首筋に刃を当てた。

「ちょっ、待ってください!」

今にもやっちゃいそうな沖田を制止したのは、遼の叫び声にも似た声だった。

「情けをかけられたら土方さんのプライドが傷つくだけでさァ。どんどん言ってやってくだせェ」

サディスティック星の王子が降臨した沖田は、遼に土方の傷口をえぐるよう促す。

「情けじゃなくて…今の仕合い、私の反則負けです!」
「はぁ?」
「近藤さんが「剣道の公式ルール」とおっしゃったのに、私、副長さんに向けて竹刀を投げてしまいましたから」
「あ」



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