銀色の人。

□【満月の夜】
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にこにこと楽しそうに笑いながら、遼は土方の頭をぐりぐりと撫でまわした。

「あ、土方さんって意外と髪の毛ふわふわ〜にゃんこみたい」

遼は「可愛い」を連呼しながら土方の頭を抱きしめる。
自然、土方は顔を遼の胸の谷間に埋める形になり、薄い寝間着では体温や感触が直に伝わった。

「神武っ」
「ふあっ、土方さんそこれ喋ったら擽ったいれすよぉ〜」

遼はけらけらと笑いながら身をよじらせ、土方はぎゅうぎゅうと胸に押し付けられる。

「んーっ、土方さん可愛い〜」
(こっ…こいつ酔うとこうなんのか…クソッ、二度と飲まさねぇ)

土方がひっそりと心に決めている間も、遼は土方をかいぐりまわす。

「いい子いい子。おりこうさんですね〜」
「お前っ、なぁ…」

何とか土方は遼の束縛から逃れ、遼の肩を掴んで引き離した。

「ちょっと落ち着け」
「落ち着いてますよ〜?
とゆーか、土方さんは優柔不断なんですよ!
そんなんだから晋ちゃんに出し抜かれるんです!」
「だーかーら!
晋ちゃんって誰だよ!」
「晋ちゃんは晋ちゃんです。この間会った時に、晋ちゃん言ってましたよぉ…『真選組は俺が潰す』って」

物真似なのか、少し斜に構えて煙草を吸うようなポーズを取る遼に、土方は目を見開いた。

「晋ちゃんってまさか…高杉晋助の事、か?」
「そーですよ」

きょとんとした顔で首を傾げる遼に、土方は茫然とする。

「あ、それからヅラも!
何か「最近アイツら出番が多いからって調子に乗ってるんじゃないか?なぁ、エリザベス」って言ってた」
「お前、桂とも…?!」
「ヅラも晋ちゃんも辰馬も銀ちゃんも…皆みーんな私の大切な人ですよ」

幸せそうに笑う遼に、土方はごくりと喉を鳴らした。

(コイツ今、何て言いやがった?)

「昔ぃ、皆で天人と戦ってたんですよ〜」
「つまり、全員…」

言いかけて、土方は言葉を飲み込んだ。
遼の言葉が全て真実だとすれば…

(聞くべきか、聞かざるべきか)

「それにね。とと様も銀ちゃん達と一緒に一杯天人倒したんだよ。とと様はねぇ…」

ふと、楽しそうに話していた遼の言葉が途切れ、土方は顔を向けた。

「なっ…!」

そして、目を見開いて驚く。

「何で泣いてるんだよ!」
「うっ、ひっく、うぅ…らって…とと様死んじゃったぁ。わたっ、私のせいで…」

ボロボロと大粒の涙を流しながら悲痛な声をあげる遼に、土方は呆然とした。

「おいっ、神武…」
「ごめんなさい…ごめ、なさいっ」
「お前は悪くねぇよ」

ごく自然に、土方はそう呟いていた。
嘆く遼に同情したのではない。直感的に「そう」思ったのだ。

「お前の親父さんが何で死んだのか俺は知らねぇ。けどな。絶対にお前が責任を感じる事は無いんだ」

土方はそう言って遼を抱き寄せる。

「お前は悪くない。だからもう泣き止め」

幼子をあやすように、土方は遼の背中を優しく摩った。
少しずつ小さくなる遼の泣き声に、土方はほっと息を吐くと同時に、我に返る。

(何やってんだ、俺は…)

何だか自分のしていることが急に恥ずかしくなり、土方は耳まで熱くなるのを感じた。
それでも、すがりつくようにして泣く遼を、土方は離せないでいた。

(コイツ、こんなに小さかったか?)

自分の半分もあるか判らないような細く小さな体は、遼が未だ子供なのだという事を土方に思い出させる。

「もう寝ろ。寝て、起きたら…そうしたら忘れてるだろ」



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