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□手術には麻酔を!
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「うおっ」
「ぉいおい…もうちょっと色気のある声出せよ」
「と!しろ…」
男に色気とは何だ。
だが自分を腕の中に閉じこめた長身の男ーー冬獅郎は悪冷えもなくクスクス笑っている。
ちょっとイラっときたが、もう慣れているので怒る気はしない。
慣れとは怖いものだ。
「いつまで笑ってんだよ…つか離れろ」
「嫌だ」
一応言ってみたが(そりゃぁムカつくくらい)カッコイい笑顔で返された。
…それにちょっとドキッとしたのは死んでも言わないが。
「はぁ…只でさえ変な噂流れてるっつーのに…」
「へー?"付き合ってる"とか?」
「そーだよ///」
こないだなんて井上と乱菊さんに抱きつかれている現場をみられ、
散々ネタにされた。
因みに乱菊さんとは冬獅郎と同じく、
外科のナイスバディーのお姉さんだ。
そしてこれまた冬獅郎と同じで、会う度抱きついてくる困った方だ。
この二人をみていて、一時期外科に行くと抱きつき癖でもつくのだろうか?
と本気で悩んだのは記憶に新しい。
「全く///只でさえ此処は変人ばっかなのに…」
「ふーん?じゃ現実にすっか」
「そうだな。現実に…現実に?」
自分で言っといてなんだが、フリーズ。
こいつ何言ってんだ。
現実にってことはあれか。
あれなのか。
変人じゃなくて恋人か。
ようやく理解したが時すでに遅し。
何故か横抱きにされ、設置された診察台に倒される。
「え…?ちょっ」
「さて…手術を始めます…ってな?」
「すんじゃねぇぇぇ///!!!!!!!!!」
その日、俺の叫びは病院中に響きましたとさ。
ご愁傷様様(現実逃避)
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