★そのた

□最後は君のキスで終わらせて
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ケンカをした。
今までだってケンカしたことはあったけど、こんなに大きくケンカしたのは初めてだった。

最早、なにが引き金になったのかは覚えていない。
ただ、今まで溜まっていたものがお互いに弾け出てしまったのだ。

「もへじ・・・」

鳴らないケータイをいつまでも眺め、愛しい彼女の名前を声に出す。
夜だというのに、明かりがつかない自室にため息と後悔が漂う。

鳴るケータイには黒子っちの名前。

「もしもし・・・?」

「随分辛気くさい声ですね。」

「今日は何時にもまして辛口っすね。」

乾いた笑いで俺はうなだれる。

「もへじさん、ずっと泣いてますよ。」

「俺だって泣いてるっす。」

黒子っちともへじは幼なじみのお隣さん。
だから、俺と何かあるとすぐに黒子っちを頼りにしていた。

「ごはんも昨日から食べてないみたいです。」

「俺もっす。」

「・・・早く迎えに来てあげてください。じゃないと・・・」

「黒子っち!!」

声を荒げるが、すでに通話は切られていた。

上着をつかむとすぐさま彼の家へ走り出した。

嘘だ、頭ではそう思っても、「まさか、もしかしたら」が消えてくれない。

「もへじを奪ってしまいますよ?」

彼が本気を出してしまえば、もしかしたら、愛しい彼女を奪われてしまうかもしれない。

他の誰かなら、奪われない自信がある。
だけど、彼だけは別だ。
幼い頃からずっと一緒。幼なじみの特権。
信頼し合っている彼らに果たして自分の愛情は勝てるのだろうか?
しかも、ケンカをしてしまっている今、それは厳しさを増すものだ。

彼の優しさは俺の脅威。
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