短編

□スノーフェアリー 【完】
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「───昨日○○山にて男女4人が遭難中、捜索隊が山を探しているようですがいまだに見つかっておりません───」


そんなニュースを小耳に挟んだ気がする。


だけど俺はまさかこのありふれたニュースと俺のこの後に大きな変化を及ぼす要素となるだなんてまったく思わなかった。


――――――――――――・・・・・



「お母さん・・・、どうしよう。きっと捜索隊が・・・」


「分かってるわ」


山奥のとある小屋、外は猛吹雪、その小屋の中には二人の女性がいた。

こんなほったて小屋のようなところで暖もとらずに身震いひとつせずにいられるのは並みの人間でないことをうかがわせる。


「きっと吹雪がやめば捜索隊がこの山を捜索しに来る・・・もうここが見つかるのも時間の問題ね」


「またお引越し・・・?」


若い方の女性が聞いた。


「いや、もう人間たちは私の住む場所に迫ってきている。われわれ雪女が引っ越す場所はもうないわ・・・」


「じゃ、じゃぁどうするの?お母さん!」


お母さんと呼ばれた薄い浴衣を着た女性は考えこんだ。


「ゆき、あなたはもうこの山を降りなさい。あなたはまだ若いわ。そして人間と暮らすの。生き残る方法はそれしかないわ」


「分かった、お母さんと一緒に・・・」


「いや」


年長のほうの女性が首を横に振った。


「私はずっと山で暮らしてきた。もう山から離れるだなんてできないわ。それに・・・」


母親はにこっと笑って娘の冷たい頬に手を当てる。


「こんなきれいな女の子、人間でもなかなかいないわ。あなたに迷惑をかけたくはないの」


「迷惑じゃないよ!お母さんも一緒にきてよ!」


「だめよ、もうあなたも独り立ちしていい年頃だわ。もうあなたに私は必要ないのよ」


「嫌だよぉ!まだ私にはお母さんが必要だよ!」


「お願い、ゆき。聞き分けて頂戴!」


そういうと母親は娘を外に連れ出し、中から鍵をかけてしまった。

吹雪の中外に出された娘。雪女なので寒さは感じない。

だが心の中には何か冷たい風が吹いていた。



――――――――――――・・・・
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