短編

□愛欲チョコレート
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今日は2月14日
むせかえるような甘いチョコの香りと恋人たちの囁きで溢れかえる

そう、バレンタインデーです!


…バレンタインデーなのですが





『……トキヤのばーか』



私の愛しの彼は今日もお仕事で大変なのです

今一世を風靡しているアイドル、一ノ瀬トキヤ…それが私の恋人


芸能人のお休みは不定期でこんなイベントごとの時はほとんど一緒にいれない


寂しくないかって聞かれればもちろん寂しいよ
でも頑張ってる彼を見ている時が私の幸せだから、全然耐えられる





…た、耐えられ……っ






『……るわけがないでしょうがぁあああ〜ッ!!!』





そう叫びながら私は一心不乱にボウルに入ったチョコレートをかき混ぜていく

普通なら昨日のうちに用意しておくのだが…私たちの場合、早めに作りすぎても腐らせるだけだ



トキヤと付き合って初めてのバレンタインデー…

口には出さなかったけど…楽しみにしてたんだよ?







『……………っ』




あ、ヤバイ…
ちょっと泣きそう


ダメだよ、こんなことで挫けたら
トキヤは今、お仕事頑張って……





そんなことを考えていると…




ピ―ンポ――ン!



突然、家のベルが鳴り響いた



誰だろう…
宅急便かな…?

私は少し不思議に思いながらもゆっくりドアを開けた





ガチャ……



『はーい、どちらさ……』

「名無し、会いたかった…」





バタンッ



……あれは幻覚だろうか

何故、今仕事の真っ最中であろう愛しのダーリンがうちのドアの前にいるんだい?

ついに私も末期か…





「なっ…名無し、何故閉めるのです?私ですよ」


『……う、うわぁあああッ!?』




げ、幻覚じゃなかったッ!!!!

ヤバイヤバイヤバイ!
イヤ、内心はとても嬉しいよ!?
嬉しいけどさ……!



実は私、トキヤにバレンタインデーのチョコを作ることを話していないのだ
だってあげれるかもどうか分かんないし……

何よりもトキヤに気を使わせたくなかったんだもん…



だからこの状況は非常に不味い!

流石に彼氏にチョコ作りの現場を見られるのは恥ずかしすぎるぅうう!!






「名無し…早く開けないとどうなるか分かって……」


『ひやぁあああッ!?』




しまったぁああッ!!
ドSトキヤさん降臨しちゃったよ!!!!


とりあえず私は急いで使っていた道具を片付け、チョコの入ったボウルを冷蔵庫に突っ込む

そして玄関にササッと戻り、目の前のドアを開けた







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