短編
□ひまわりは枯れた
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『ねぇ、龍也は花の中で一番何が好き?…私はね〜、ひまわり!!』
愛しい声が俺の脳内に響き渡る
いつも元気でハキハキしてて、全く自分を飾らない
そんなお前が好きだった
「………名無し」
布団に寝転がったままアイツの名を呼び、手を伸ばす
しかしその腕は空を切って…残るものは虚しさだけだった
唇をぎゅっと噛み締めて、布団から起き上がる
するとそれを見計らったかのように携帯に電話がかかってきた
電話の主は……げっ、社長だ
ピッ……
「…もしもし」
『オーウ、龍也さーん!!今日1日アナタのお仕事はお休みにナリマシター!』
「はぁ…ッ!?」
『というわけでー、お家でゆっくりしていてクダサーイ!』
社長はそれだけ言うといきなりブチッと電話を切った
……くそ、一体何なんだあの人は…
まぁ、休日がありがたくねぇと言うわけではない
今日くらいは社長のいきなりの好意に甘えるとするか…
そう思いながら俺はいつものスーツを着込み、適当に用意を済ませて外へ出た
行くあてもないままボーっと歩いていると、ふと思い出すのは今朝の夢
あれは…アイツがいきなり好きな花の話を始めたあの日の思い出
アイツが突拍子のないことを話すのはよくあることだが、その時の話は何故か俺も興味が沸いて理由を聞き返したんだ
そしたら……
『だって龍也の名字は日向でしょ?』
「はぁ?それとこれとなんの関係があんだよ」
『大有りです!だってヒマワリは太陽の方を向いて花を咲かすじゃん、まさに「日向」!!』
「………頭沸いてんのか」
『ちょっ、ヒードーイー!!』
あのあとアイツが『私と龍也が結婚したら私も日向だからねー!』とか言ってきやがったから軽く一発殴ったのを覚えている
…しかし、この時俺も俺で柄にもなくこう思ったんだ
コイツが…名無しこそがまさにヒマワリだって
いつも無駄に真っ直ぐでどんなにギラギラと眩しく光ってもお前だけは俺の方をずっと見てくれる………ってな
そんなことを思い出しながら俺はとある店の前で足を止めた
そこは…花屋
気がついた時には俺は既にヒマワリの花を一輪買っていたのだ
…俺らしくねぇ
だがこれをやったらアイツは喜ぶだろうか…そんなことを考えながらまた歩きだした
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