短編

□わんこのそれは確信犯。
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私の彼氏はとっても可愛い
カッコいいけど可愛い

それはもう、まるで子犬を連想させてしまえるほどに


私、彼のことなら何時間でも語り尽くせる自信があるよ








「……ねぇ、名無し…ちゃんと話聞いてる?」


『は……っ!!』





ふと、聞こえた声により呼び戻される意識
しまった…ついボーっとしちゃってた……


そこで私は名を呼んだ少年の方をゆっくりと振り返った

その表情は誰がどう見ても不機嫌そのもので…







『ご、ごめんよー!音也!!』




そう…今私の目の前にいる彼こそが私の恋人、一十木音也なのだ


睨みをきかせても隠しきれないくりっとした瞳、むすっとへの字に曲がった唇…そして頭には犬の耳が垂れ下がっている幻覚すら見える

……私、末期かな








「…………。」

『お、音也くーん?』


「………………。」

『お、音也〜?』


「………ふんっ」


『音也、ごめんってば〜…なんでもするから許してよぉ』



「…なんでも?」





私の言葉に反応したのか、ようやく音也はうちの目を見て話してくれた

よし、もう人押し!!







『うん、なんでもするよ!私にできることならッ!!』


「…ふーん」





そこで音也は私の方を見据えながらニヤリと口元を上げた

まるで悪戯を思い付いた幼子のような今の彼


……あ、あれ?
なんか嫌な予感が…










「じゃあさ、名無し…俺のお願い、聞いてくれる?」


『う、うん…!』







あぁ、どうか変なものではありませんよう……



「名無しから俺にチューして」




にぃいいいいいッ!!!!!










『わっ、わわ私からキキキキキス……っ!?』


「うん、そう!ちゃんと唇にじゃないとダメだからね!」





そう言って「ん〜…」だとか呟きながら目を閉じる音也

いわゆるキス顔ストップ






『〜〜〜〜っ…!!』



なんなんだこれは
本当になんの羞恥プレイだよ!


そりゃ、一応恋人同士だし…音也とのキスは何度も経験している

けれど…私からといったら話は別
今の今まで音也に流されるままだったから……








『む、無理だよ…そんな……っ』


「……名無しは俺とチューするの嫌なの?」


『違っ、そういうことじゃなくて…』





私が音也とキスしたくないなんてあり得ないことを言われたので驚きの余りにパッと顔を上げる

するとそこにいた音也の瞳はうるうるとしながら私を真っ直ぐ見つめていた


うっ…………
なんかすっごく悪いことしている気持ちに…











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