短編

□消毒液=君の愛
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※情事後 注意













『ん………』




自分の寝起き特有のくぐもった声を聞きながら微かに目を開く


辺りを見れば暗い暗いこの部屋を月明かりが優しく照らしていて…綺麗だけど、同時に何故か不安になった

そうか…まだ、夜なんだ







「…名無し、起きたんですか?」




そこで、ふと響いたのは愛しい彼の声で…

私の中にあった不安は一瞬の内に溶けて消え去った








『トキヤ……』


「大丈夫ですか?まだ少し気だるそうですが…」


『うん、大丈………いたっ』





トキヤの言葉に返答しようと腰を上げた途端に下半身に走った言い様のない痛み

私がそれに顔を歪めるとトキヤは心配そうに、しかしなんだか満足気に優しく腰を擦ってくれた








「やはり…少し激しくし過ぎたようですかね」


『……そういう自覚があるならもうちょっと優しくできないの?』


「貴方だって、満更でもなかったじゃないんですか?私の下で良い声で気持ち良さそうにな『あぁああああああッ!!!』






トキヤが破廉恥極まりないことを口に仕掛けたのでそれを必死に遮る

あぁ、もう…こういうところはちゃっかりしてるんだから……










「…それに、痛いのはお互い様ですよ」


『へっ……?』


「これ、見てください」




そう言いながらトキヤは私に背を向けて自らの素肌を晒してきた

よく見るとトキヤの白い肌に赤い傷口がちらほらと…


…………ん?








『ま、まさか…これ……』


「貴方が私にしがみついた時についたようですね、爪を立てるほど良かったんですか?」


『ご、ゴメン…!!』


「別に謝らなくても良いです。ただ明日のグラビア撮影に影響が…と」


『ほほほ本っ当にスミマセン!今、消毒を…!!』






私は慌てふためきながら救急箱を探すため、ベッドから飛び起きおうとした

しかしそこで突然トキヤにグイッと腕を引かれ、私は再びベッドの中へと戻されてしまう

しかもそのまま私の体はトキヤの腕の中へと包み込まれていた



えっ、な…なんで?







『ト、トキヤ…?』


「消毒液なんていりません。あんなもの、ただの気休めにしか過ぎません」

『…………。』


「…今は、側にいてください」


『でも、傷が…』


「強情ですね、私が良いといえば良いんです」


『え〜………』


「…そんなに心配なら……貴方が舐めて消毒してくれますか?」



『…はい?』








なんか今…トキヤの口からあり得ない言葉が聞こえたんですが…

幻聴ですよねー?









『えっと、今なんと?』


「ですから、貴方が舐めてくれたらいいんですよ」






はい、幻聴じゃなかったァァアアアアアアアアアアッ!!!!


ていうかこれは不味い
非常に不味い

なんかトキヤさんの目が心なしかギラギラしてるんですがッ!!

良からぬスイッチが入っちゃってるみたいなんですがッ!!!










「お願いできますよね、名無し?」

『イヤイヤ、それは流石に…』


「……そうですか」






あ、あれ……?

なんか思いの外あっさり引いたぞ…



私がそう思ったのもつかの間

トキヤは一瞬ニヤリと微笑んだかと思うと、いつもの彼からは想像できないような笑顔を作りながら…








「名無しちゃんは僕の背中ペロペロするの嫌なのかニャ?」



『………ッ!!』








そ こ で HAYATO か よ ッ!!

ヤバイ、こいつ計算してやがる!
本気だ!本気だよ、この子!!!


ていうかこういう時だけそんなうるうるした目でおねだりしてくるなッ!!







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