短編

□CメロみたいなAメロ
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それは始まりから激しくて
まるでマンガみたいな出逢い…




「翔ちゃーん、どこ行っちゃったのー!?」



僕、来栖薫は今日双子の兄である翔ちゃんに会うため早乙女学園に来ていた

目的はもちろんいつも無理してばっかの翔ちゃんを家に連れ戻すため

なのに翔ちゃんったら僕の姿を見たとたんにダッシュで逃げちゃうんだもんな……まぁ、ここ最近週5回はこうして鬼ごっこを繰り広げいるわけで





「はぁ…こんなに走ったら翔ちゃん体に悪いよ、僕だってこんなに疲れるくらいなのに……」



僕はそう呟きながら勢い良く近くにあったベンチに座り込んだ
額にはじんわり汗が染み出ている

ふぅ、と少し荒い息をしながらゆっくりと体の力を抜こうとした





その時……



『     』



突然声らしきものが聞こえてきたのだ

何を言ってるかは分からないが…


「(歌……?)」


そう、それは確かに歌だった
そこで僕は全神経をその声に集中させた


途切れ途切れに聞こえる歌は出始めから凄く激しくてかっこよくて、思わず「耳を奪われる」そんな感覚に陥りそうになる





「凄い……」


その声は確かに僕を魅力していた

そこで声の主が誰なのかが気になり僕はキョロキョロと周囲を見渡してみた


するとすぐ近くの大木の上で足をブラブラと動かしている人のようなものが…

少しだけ木に近づき、耳をすますと確かに歌はここから聞こえてくる





「(この子がこの歌を…)」


そう思いながら、ふと大木の上を覗いた



その瞬間、ぱちくりと世話しなく動く綺麗な瞳と目が合う

その目と声の持ち主はまだあどけなさの残る女の子で…その子は僕の姿を認識すると顔を真っ赤にしながら



『う、うわぁああああっ!?』

と叫んだかと思うとその反動で



ズルッ……

そのまま木の下へと落下した



『えっ……』

「危ないッ!!」





ドンッ…!!

鈍くて重い音が響き渡ると同時に身体中を駆け巡る微かな痛み

それは僕が落ちてきた彼女のクッションとなったことを表していた





『ご、ごめんなさいっ!』


突然のことに驚きながらも何度も必死に謝ってくる彼女

ほんのり染まったピンク色の頬がとても愛らしい……ってなに考えてるんだ、僕は





『本当にすみません!まさか人が近くにいたなんて思わなくて…』

「全然大丈夫だよ、それに…すごく綺麗な歌だった」

『や、やっぱり聞いて…』



僕が歌を聞いていたと分かったからかますます恥ずかしそうに体を縮める彼女

それを見て僕は自分でも気付かない内に胸を高鳴らせていた





『それじゃあ、私…行きますね』


この空気にいてもたってもいられなくなったのか彼女はスカートの汚れを軽くはらい、ペコリと僕を見てお辞儀をしてからこの場を去ろうとした




「待って!!」


でもそれがもどかしくて切なくて
気が付くと僕は彼女を呼び止めていた




『…な、なんですか?』


彼女の瞳が不安気に揺らめく
その動作1つ1つが僕を僕で無くす





「君の歌…また聴かせてよ」


こんなの僕らしくない、なんて自分でも分かってる

でも今まで翔ちゃんのことしか考えてこなかったから、これがどういうことなのか自分でも理解出来てないんだ

ただ…また彼女の歌声が聞きたい



すると目の前の少女は先ほどまで歌を奏でていた小さな唇をそっと開き、こう呟いた



『……うんっ』



そう言った彼女は今日見た中で一番可愛らしかった


……なんてね














CメロみたいなAメロ

(翔ちゃんがこの学園に通い続けるの…許そうかな)(それを理由にまた会える?)


end



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夢小説企画サイト「Ljud」様へ提出させていただきました

薫くん夢はあまりないので頑張ろうとしたが案の定玉砕\(^P^)/

では、ありがとうございました


管理人:メリー

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