雪ノ欠片
□第6
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(・・・ドサ?)
痛みはなかった
優香は恐る恐る目を明ける
羅刹の姿は無い
狂った様な紅い瞳の変わりに優香を見下ろすのは
不機嫌そうな翡翠色の瞳
足元には崩れ落ちた真っ白な髪を持つ人
感覚の無くなった優香の腕は上がったまま脇差を支えている
――チャキ…
眼前に刀の切っ先を突きつけられる
『・・・お、きた・・・そう・・・』
不意に漏れた優香の言葉に、翡翠色の瞳は細まる
――キンッ!!
優香の脇差は弾かれ、弧を描き飛んでいった
押さえつける力の為に在った腕は、脇差を掴むことなどできはしなかった
脇差を弾いた刀の切っ先は、再び優香の眼前に戻される
上がったままの腕は、支える物がなくなっても下がりはしなかった
…否、感覚の無くなった腕を下げる術を優香は知らないのだ
突きつけた刀の持ち主は
その姿を見据え、ますます不機嫌の色を濃くする
左手で優香の右腕を掴み、引き、捻り上げる
『―― っ!!!』
優香は、勢いよく引っ張り上げられる
腕を捻り上げられた為、背中から男にぶつかる
が、足に力が入らず、立つことなど出来ない
そのまま崩れ落ちる
「!!・・・ちょっと!」